2009年11月19日 00:00 〜 00:00
アンヘル・グリア・OECD事務総長

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会見リポート

日本経済のジレンマ

梅本 逸郎 (時事通信外国経済部次長)

民主党政権が発足して2カ月余りの東京を、OECDのグリア事務総長が訪れた。年2回発表される経済見通しを、本部パリでなく初めて東京から発表するというふれ込みだったが、本来は半年前の発表に際して訪日を計画していたものの、総選挙近しということで今回の訪問となったと聞く。

そのOECDの経済見通しでは、日本経済が2010年は1・8%、11年は2・0%のプラス成長に復帰すると予想されたが、「2%成長でもデフレ克服、失業率低下は見込めない」と、閉塞状況の打開には厳しい見方が示された。一方で、膨れ上がる政府債務には「信頼できる中期財政再建計画を示せ」と注文も。

どう見ても目一杯の財政出動を働かせている上に、しつこいデフレが続く日本経済に処方せんはあるのか。事務総長は「デフレだけに着目すれば歳出拡大が必要だし、財政健全化に着目すれば、増税や支出カットが必要」だが、どちらに傾けることもできないとみる。その上で既に金融政策もゼロ金利という状況で、鳩山政権の経済政策、財政運営は「ジレンマに直面」しており、「非常に狭い余地」しか残されていないと率直に指摘した。

とは言え、外相、財務相としてメキシコを通貨危機から立ち直らせた実績があるグリア氏。「(2009年の)5%のマイナス成長からプラス2%へ、7ポイントも成長率が改善する見通しなわけで、これは立派なものだ」と、日本に向けて「元気を出せ」とのメッセージも忘れなかった。そして、環境や女性の社会進出などに着目し、新たな成長の道を探る「構造改革が必要になるだろう」と締めくくった。

グリア氏は東京滞在中、鳩山由紀夫首相、菅直人副総理、藤井裕久財務相ら主要閣僚と会談。折しも「仕分け人」による「予算ムダ使い」排除が国民の注目を集める中で、新政権の下での日本経済の前途に、果たしてどんな印象を抱いたのだろうか。
 

ゲスト / Guest

  • アンヘル・グリア / Angel Gurria

    経済協力開発機構 / OECD

    経済協力開発機構事務総長 / Secretary-General,OECD

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