2009年11月11日 00:00 〜 00:00
フォルカー・シュタンツェル・駐日ドイツ大使

申し込み締め切り

会見リポート

外交は「忍耐」の連続

熊倉 逸男 (中日新聞・東京新聞外報部)

相次いで政権交代した日本とドイツ。両国の新政権がともに、外交で最重要視しているのが対米関係だ。ドイツはブッシュ前米政権時、イラク戦争に反対し、米国との関係を悪化させた。シュタンツェル氏は「欧州の利益のためには米国と行動をともにしたほうがいいが、すべての面で可能なわけではない。対立しても対話を行うことが必要。ほとんどの場合、妥協はできる」と、追従ではなく、筋の通った外交の大切さを訴える。米国との付き合い方を考える点で示唆に富む。

駐中国大使などを歴任しアジア事情に精通する一方、本省政務総局長も務めた幅広い目配りで、核不拡散、アフガニスタンなど、話は国際情勢全般に及んだ。20年前のベルリンの壁崩壊と比較し、朝鮮半島については「北朝鮮の指導者は、旧東独の指導者より巧みに、改革の動きが起きないようにしている」と指摘、ドイツでのような平和裏での統一実現は、難しいとの見方を示した。

欧州連合(EU)は、12月の新基本条約「リスボン条約」発効で節目を迎えた。EU大統領新設などが盛り込まれているが、具体的な体制づくりなど課題は多い。「一歩後退、二歩前進。それで、よい結果がもたらされる。外交の知恵は忍耐、忍耐、また忍耐です」。簡単で、当たり前のような心構えかもしれないが、30年間の外交官生活から得た教訓だけに、重みがある。

日本が北朝鮮、ドイツがイランなどと、地域的な外交の関心事は異なるが、「日本は西側社会の一員。温暖化防止など、グローバルな問題では、共通の価値観を持つ共同体」と連携の重要性を訴える。「懸案のないのが懸案」などと揶揄される日独関係。絆が一層深まるよう、辣腕ぶりを期待したい。
 

ゲスト / Guest

  • フォルカー・シュタンツェル / Volker STANZEL

    ドイツ / Germany

    駐日ドイツ大使 / German Ambassador to Japan

ページのTOPへ