2009年10月28日 00:00 〜 00:00
青木眞・感染症コンサルタント

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会見リポート

タミフルの大量使用を懸念

田中 秀一 (読売新聞医療情報部長)

青木氏は「薬漬け」と言われてきた医療界で、抗生物質などの使いすぎに警鐘を鳴らしてきた感染症専門医。流行する新型インフルエンザへの対処について、示唆に富んだ講演となった。

まず、感染症診療の原則について、「どの病院でも診る態勢が必要」と述べた。エイズや結核では、診療を受け持つ病院が指定されているが、患者はそれ以外の病院に行くことも多い。その場合、病気が見逃され、院内感染などの恐れも大きくなるからだ。

次に今春、新型インフルエンザが海外で発生した際、空港で厳重な検疫が行われたことに言及。「検疫や隔離では、インフルエンザの感染拡大を防げないことは感染症疫学の常識」と指摘したうえ、専門家の養成の必要性を説いた。

今後の対策については、「すでにパンク状態にある医療機関に、負荷をかけないことが大切」とした。タミフルなどの治療薬や詳しい検査は、多くの場合は必要ないが、医師は「万一、悪化した時に訴えられたら…」との不安から処方や検査を行い、時間と労力をとられているのが現状だという。

タミフルを巡っては、米国では「ふだん健康な人には原則として必要ない」とされているのに対し、日本の感染症学会は「全員に使う」方針を打ち出している。日本はタミフルの使用量で世界の7割を占めるとされており、青木氏は「薬が効かない耐性ウイルスを広げる恐れがある」と、薬の大量使用に懸念を表明した。

新型インフルエンザという未知の感染症の登場に浮足立ち、「検疫による水際作戦」「薬の大量使用」など効果が定かでない策に走る日本。頭を冷やして対処することが必要だと改めて感じた。
 

ゲスト / Guest

  • 青木眞 / Makoto AOKI

    日本 / Japan

    感染症コンサルタント / Contagion Consultant

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