2009年10月21日 00:00 〜 00:00
赤松広隆・農水相

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会見リポート

揮ごうに「居処恭」 その心は?

石井 勇人 (共同通信編集委員兼論説委員)

44歳で日本社会党の書記長になった若き革新政党のリーダーが、約16年半を経て農林水産相に就任した。本人が「正直、びっくりした」と言うくらいだから、官僚側も身構えた。

これまで、農水省は自民党と二人三脚で農政を展開し、総選挙前の6月、井出道雄事務次官は、民主党の農政を「現実的でない」などと、公然と批判した。

組閣翌日の9月17日、赤松農相は、同省幹部による恒例の「初登庁お出迎え」を拒否。「即時、井出次官の更迭もありうる」と、取材現場は緊張した。しかし、意外や意外。赤松農相は、官僚側とあっさり「歴史的和解」をした。これは「友愛」の精神なのか。

昼食会後の会見で、代表質問者は開口一番、「官僚に甘いのではないか」と鋭く問うた。農相は「役人を批判するのはたやすいことだが、それだけでは変わらない。仕組みを変えないとならない」と応じた。

語り口は温和だが、その意味は重く冷徹だ。事務次官を残留させた真意は、「面従腹背」を許さないための「間接統治」だと、私は解釈した。民主党の政策を推進するために、「許されざる者」には十分に働いて償ってもらう。サボタージュしたら、その時こそばっさりと解任か─。想像を巡らしているうちに、会見はあっという間に終わってしまった。

最後に、赤松農相は、ゲスト・ブックに「居処恭」と記帳し、「どこにいても謙虚さを忘れず、初心を忘れないよう、自分に向けて書いた」と説明した。

これは、論語(子路)の一節で、「執事敬、与人忠、雖之夷狄、不可棄也」と続く。恭、敬、忠は、野蛮な未開地にいても棄ててはならない行動原理である、というような意味だ。やはり、赤松農相は、心底では決して農水官僚を許していないのだろう。

ゲスト / Guest

  • 赤松広隆 / Hirotaka AKAMATSU

    日本 / Japan

    農水相 / Minister of Agriculture, Forestry and Fisheries

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