2009年10月16日 00:00 〜 00:00
川口順子、ギャレス・エンバス・核軍縮国際委員会共同議長

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会見リポート

核抑止に頼らない「心理変化」へ

石合 力 (朝日新聞GLOBE副編集長)

オバマ米大統領のノーベル平和賞受賞で核廃絶への機運が世界的に高まるなか、世界各国の賢人らが約1年間にわたって核廃絶への具体的な道筋を検討してきた「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」。その共同議長の2人が、広島での本会合を前に強調したのは、「世界の不安定化を招かない形でいかに核兵器の役割を減じていくか」(川口氏)という「野心的かつ現実的」(エバンス氏)な道筋だ。

委員会の行動計画では(1)2012年までの短期(2)12年から25年までの中期(3)25年以降の長期──の3段階に分け、中期までに核の弾頭数を劇的に減らしたうえで、25年以降を「廃絶段階」と位置づける。実現へのハードルは高い。広島からは、廃絶の期限を明示しなかったことについて「だったら、いつまでに廃絶するのか」という批判の声も聞こえる。

委員会は、核抑止を否定する平和運動と、核抑止に依存し続ける核保有国とが、たどり続けた平行線をどう交差させるか、という理論(ドクトリン)面での新たな試みにも取り組む。川口氏は「核兵器がゼロになるまでの間、核抑止が存在することは、(核廃絶とは)矛盾しない」と述べ、核軍縮から核廃絶に移行する具体的な道筋を探る重要性を強調した。

エバンス氏は45年前、学生時代に初めて来日した際に広島を訪れ、心を動かされたという自らの体験を明かした。そのうえで、核抑止に代わる新ドクトリンは、核抑止に頼らずとも安全保障を得られるという「究極的な心理変化」を各国の指導者、国民にもたらすことができるかどうかだと述べた。その実現に向けて、広島や長崎、そして日本の果たす役割は小さくないはずだ。
 

ゲスト / Guest

  • 川口順子 / Yoriko KAWAGUCHI

    日本 / Japan

    核軍縮国際委員会共同議長 / Joint Chairman,ICNND

  • ギャレス・エバンス / Gareth Evans

    オーストラリア / Australia

    核軍縮国際委員会共同議長 / Joint Chairman,ICNND

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