2009年10月07日 00:00 〜 00:00
リュック・モンタニエ・世界エイズ研究予防財団理事長

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会見リポート

エイズ研究の先駆者 衰えぬ意欲

宮田 一雄 (産経新聞特別記者・編集委員兼論説委員)

フランスのパスツール研究所でエイズの原因ウイルスが発見されたのは1983年だった。そのウイルスがHIV(ヒト免疫不全ウイルス)と名付けられる3年も前のことだ。研究グループを束ねていたモンタニエ博士は昨年、部下だったフランソワーズ・バレシヌシ博士とともにノーベル医学生理学賞を受賞した。

発見から四半世紀後の受賞は、研究がいかに先駆的だったのかを示してもいる。後続の研究者の努力によりHIV感染を見分ける検査法が確立し、感染した人が長く生きていくことを可能にする抗レトロウイルス剤の三剤併用療法も開発された。

かつて「不治の病」とされたエイズのイメージが、「治療可能な慢性疾患」に近い状態にまで変わったのも、モンタニエ博士らの発見があったからだろう。だが、博士自身はまだ、その業績では満足できない。

「HIVに感染した人は1996年以来、三剤併用療法により、いい状態で生活できるようになった。それでもHIVは体内に残っている。高価で副作用も厳しい薬を毎日、服用しなければならない状態では、完全な解決策とは言えない」

それでは、どうすれば完全な解決策になるのでしょうか?

「3~9カ月間の三剤併用療法によって血液中のウイルスを検査では検出できない量にまで減らす。その後で、治療ワクチンや抗酸化物質を使って患者の免疫力を強化すれば、ウイルスがどこかに隠れていても増えないように抑えられる。この状態なら実現は可能です」

HIVの感染を防ぐ予防ワクチンの開発は困難だが、感染した人の体がウイルスと闘う力を引き出す治療ワクチンなら有望だという。会見ではエイズだけでなく、新型インフルエンザやアルツハイマー病、パーキンソン病といった疾患を防ぐ予防医学の必要性も強調した。研究への意欲はいまも衰えていない。
 

ゲスト / Guest

  • リュック・モンタニエ / Luc Montagnier

    フランス / France

    世界エイズ研究予防財団理事長 / Director,World Foundation AIDs Research and Prevention

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