2009年09月11日 00:00 〜 00:00
寺島実郎・日本総合研究所会長

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会見リポート

対米関係の再設計を

山科武司 (毎日新聞政治部副部長)

鳩山民主党政権のブレーンの1人と目される寺島氏の語った内容は、日米関係から米中関係、中東問題まで多岐にわたった。

氏は、まずイラク戦争とサブプライム問題で疲弊した米国から語り始め、「世界秩序の中核を支えてきた米国の求心力が急速に低下」している世界の現況を説いた。

次いで視点を日本の貿易構造の変化に移した。日本の貿易総額に占める米国の割合が、1990年に27・4%だったのが、09年上半期は13・7%まで低下し、代わって中国(20・4%)、中国本土に香港、台湾、華僑が多く在住するシンガポールを加えた「大中華圏」(30・1%)が伸張していると指摘した。否が応でも中国と向き合わないといけない日本の現状を訴え、データを駆使したその説明には説得力があった。

さて政権が交代した日本の進むべき道だが、氏は、今こそ冷戦構造を清算し「相対化する日米中の力関係の下で、対米関係も再設計し直す時期である」と説く。大いに納得できる主張で、日本をこれまで「米国の周辺国」としていた諸外国の見方を改めさせる好機だと、私も思う。

さらに共感したのは、質疑応答で「ルールを作る側にいる」ことの重要性を説かれた時だ。

昨年11月に施行された英国の温暖化対策「気候変動法」の説明を在日英大使館で受けたことがある。気候変動が英国に及ぼすリスクを査定する義務を政府に課すなど一定の法的拘束力を持つ枠組みだ。金融危機で日本より厳しい経済状況にあるにもかかわらず、大使は「これで新しい事業、雇用、輸出機会が創出できる」と胸を張ったのが印象に残った。この分野で先鞭をつけ、交渉を主導したい英国の思惑は明らかだった。

ルールの遵守が得意で、変更のたびに必死に順応してきた日本。だがもう十分だ。早くルールを作る側に立ちたい。切に思った。

ゲスト / Guest

  • 寺島実郞 / Jitsuro TERASHIMA

    日本 / Japan

    日本総合研究所会長 / President, the Japan Research Institute

研究テーマ:総選挙後の日本

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