2009年09月03日 00:00 〜 00:00
松本正生・埼玉大学教授

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会見リポート

“世論調査”へのエール

福井 明 (毎日新聞世論調査室長)

松本さんは今、世論調査研究の第一人者で、メディア各社の世論調査に精通している。このため、新聞社の調査担当者としては、テスト(8月の衆院選情勢世論調査)の採点結果を告げられる学生のような心境で講演を拝聴した。

松本さんはまず、「世論調査は今、かわいそうだ」と切り出した。理由は2つ。「マスコミ各社が世論調査を酷使しているから」「一般の人たちは調査結果をもてはやすのに、調査対象になったら回答するのを嫌がるから」だという。電話方式の世論調査が定着して以降、新聞、通信、テレビ各社の調査回数は激増した。一方、調査対象者は「振り込め詐欺」などへの警戒もあって電話での応対に消極的で、回収率は高くならない。そうした日本の世論調査の実情を端的に指摘した。

そして、話はこの日の核心部分に入っていく。衆院選でのメディア各社の情勢調査に関してだ。

新聞各社は調査結果の掲載の早さを競い、調査時期は選挙の度に前倒しされる傾向にあった。今回は複数の新聞社が公示日から調査を始めた。松本さんは、これについて「RDD(電話世論調査)による祭りは行き着くところまで行った」とチクリ。そのうえで「当事者は他社が先に紙面化したらやりきれないのかもしれないが、世の中の人はまったく気にしていない」「今回のような荒っぽい結果の選挙なら(調査の)精度はあまり問われないが、今度は問われるかも」と苦言を呈した。

さらに、情勢調査が有権者の判断に影響を与えるアナウンス効果に関して「最近は、勝ち馬に乗れ効果が多いと思う。判官びいき効果は少なくなった。自分を多数派に置きたい心理が強いためだ」と解説。「各新聞社の世論調査結果が『世論』になる。だから、新聞社の情勢調査は微妙に外れる方がいい」と語った。

「学生」は少し気が楽になった。

ゲスト / Guest

  • 松本正生 / Masao MATSUMOTO

    日本 / Japan

    埼玉大学教授 / Professor, Saitama University

研究テーマ:世論調査

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