2009年09月30日 00:00 〜 00:00
ランドール・ジョーンズ・OECDシニアエコノミスト

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会見リポート

「出口戦略」は慎重に

妹尾 優 (時事通信外国経済部)

「百年に一度」の金融危機。米証券大手のリーマン・ブラザーズが経営破綻し、世界の緊張が一気に頂点に達した昨秋から1年が過ぎた。危機は去ったか。景気はいつ回復するのか。日本経済の分析や提言をまとめたOECD対日経済審査報告書の公表に併せて来日したジョーンズ氏が記者会見で示したのは、生きた経済の行方を見極める難しさであり、難しさゆえの慎重姿勢だった。

この1年間、対岸からの火の粉は、リーマン・ショックを「ハチが刺した程度」と評した大臣(当時)がいる極東の国にも否応なく降りかかった(「ハチ」発言はその後修正されている)。経済成長は戦後最悪の水準に急落。株価はバブル後最安値を更新し、当記者クラブと道路をはさんだ向かいの公園には、失業者らを支援する臨時テント村もできた。

しかし、いつしか自由落下の恐怖は消え、世界は夜の底を語り始めた。ほのかな明かりに一喜一憂を繰り返しながら、今や最大の関心事は、財政・金融両面による景気刺激策からの「出口戦略」に移りつつある。

これに対しジョーンズ氏は「(世界経済には)この先も多くのリスクや不透明要因が潜んでいる」とした上で、日本のデフレ懸念は依然として払拭できず、「出口戦略は努めて慎重な対応が必要だ」と強調。

もはや「待ったなし」を通り越した感の強い財政再建についても、「景気刺激策の打ち切りをはやまってはいけない。たしかに財政は憂慮される状況だが、現在の不況を脱却するほうが先決だ」と述べ、あり得べき拙速に警鐘を鳴らした。

ジョーンズ氏の発言は終始抑制が効いたトーンで、ややもすると経済が近く持ち直すことを前提に描いた先の話ばかりが目立つ報告書の文字面とは異なる印象を受けた。出口の準備は必要だが、着手について云々する時期ではない─。報告に通底する認識を確かめる良い機会だった。
 

ゲスト / Guest

  • ランドール・ジョーンズ / Randall JONES

    経済協力開発機構 / OECD

    シニアエコノミスト / Senior Economist

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