2009年09月28日 00:00 〜 00:00
保坂修司・近畿大学教授

申し込み締め切り

会見リポート

アルカイダの弱体化と分散

遠藤 幹宜 (共同通信外信部)

自爆テロに向かう直前、仲間と笑顔で語り合う若者。悲壮感や絶望感は全く感じられず、達観したような表情で死地に向かう─。講演で流された動画には、国際テロ組織アルカイダにリクルートされた自爆犯らの犯行直前の様子が収められていた。

欧米からの2次資料は原則的に使わないという保坂氏は、アルカイダ系組織やアフガニスタンの反政府武装勢力タリバンなどのサイトを定点観測。アラブ紙などを読み込み、日本国内からでもできる最大限の方法でテロを見詰めてきた。そこから浮かび上がったのは、アルカイダ本体の弱体化と各地への分散だという。

イラク戦争以降も米軍や政府標的のテロが頻発したサウジアラビアやクウェートでは、当局による弾圧が成功しテロは沈静化。アフガン・パキスタン国境地域に潜伏する指導者ウサマ・ビンラディンらの「本体」には、ジハード(聖戦)への参戦を目指すアラブなどの若者らが今も続々と集まっているが、資金難のために武器供給が停滞。前線に送り込むことができず、若者らは不満を抱えて投降、帰国しているという。

一方で、ソマリアやイエメンではアルカイダ系勢力が増長するなど地域的な多様化が進む。自爆犯の画像やビンラディンらの声明ビデオに留まらず、CGでテロの様子を再現するなどインターネットを使った「電脳ジハード」も格段に進化。保坂氏は「指導者層や武闘派にとどまらず、オタクと言える人々も多数参加している」と話す。自爆犯の人生をまとめた「殉教者列伝」も広く流布し、新規募集の一助となっている。

パレスチナやタリバンなどの自爆犯はイスラエルや米国への怒りや苦しい生活への絶望を理由に自爆テロに及ぶが、アルカイダの若者は死ぬことを前提に異国に向かうという。保坂氏はその背景にアルカイダの若者の中に「死へのあこがれ」や「死ぬことの美学」があると指摘した。
 

ゲスト / Guest

  • 保坂修司 / Shuji HOSAKA

    日本 / Japan

    近畿大学教授 / Professor, Kinki University

研究テーマ:ユーラシア

前へ 2024年03月 次へ
25
26
27
28
29
2
3
4
5
9
10
11
12
16
17
20
23
24
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ