2009年09月09日 00:00 〜 00:00
飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長

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会見リポート

25%減実現へ2つの提言

竹内 康雄 (日本経済新聞経済金融部)

首相就任を間近に控えた鳩山由紀夫氏が9月7日、国内の温暖化ガスの排出を2020年までに1990年比25%減らす新たな目標を表明したことは、国内外で波紋を呼んだ。国内では産業界が「厳しすぎる目標」と反発し、国外ではEUなどが「野心的な目標」と歓迎した。

この目標は本当に達成できるのか。できるならば、どんな手段で実行するのか。メリット、デメリットは何か。多くの人が抱くであろう疑問に、飯田氏は「実現可能」の立場から、必要な対策や政府の政策決定過程の改革の具体案を挙げながら説明してみせた。講演は25%減の目標を実現するために、乗り越えるべき課題を浮かび上がらせたように感じた。

飯田氏は過去の公害問題の反省から、自動車の排ガス規制をした結果、競争力強化につながった例を紹介。今後も国内排出量取引制度や環境税などの規制をすれば、環境産業の成長や、既存企業のグリーン化が進むと主張した。

一方で、熱波やハリケーンが頻繁に起き、地球温暖化が我々の日常生活に被害を与え始めているとも警告。太陽光パネルや次世代自動車の購入を「負担ではなく、消費・投資として考え、温暖化の進行による将来の大きな被害を避けるべきだ」と意識改革の重要性を訴えた。

飯田氏の2つの提言がこれまで実現していないのはなぜか。①排出量取引などで規制すれば、日本の産業にどうプラスになるかという具体像を、産業界も削減推進派も描けていない②多くの国民が地球温暖化を身近な問題としてとらえていない──の原因があるように思える。

鳩山新政権が誕生し、25%減の目標を実現するための検討が始まった。そのためには産業や家庭、運輸など各部門での強力な取り組みが欠かせない。この原因の解消が、目標達成に現実味を持たせる推進力となるのではないか。

ゲスト / Guest

  • 飯田哲也 / Tetsuya IIDA

    日本 / Japan

    環境エネルギー政策研究所長 / Head, Institute for Sustainable Energy Policies

研究テーマ:総選挙後の日本

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