2009年08月03日 00:00 〜 00:00
辻井いつ子・作家「著者と語る『今日の風、なに色?』 『のぶカンタービレ!』」

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会見リポート

出会いが世界を開く鍵に

高尾 義彦 (毎日新聞常勤監査役)

「ピアニストの僕がたまたま目が見えなかった。全盲のピアニストというのはやめてほしいな」。ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した辻井伸行さんの母は、ともに歩んだ20年の道のりを語り終えた後、質問に応え「息子の言葉」を披露した。

出産直後のショックを乗り越え、音楽の才能を発見して2人で前向きに生きてきた思いは、著書『今日の風、なに色?』『のぶカンタービレ』に率直に綴られているが、ご本人の語り口はやはり新鮮だった。

生後8カ月。ブーニンが演奏するショパン「英雄ポロネーズ」がお気に入りで、そのCDが痛んだため別の奏者のCDを買ってきたら反応を示さず、あらためてブーニンのCDを聴かせると、歓びの反応を取り戻した。

2歳3カ月のクリスマス。母親が口ずさむ曲に合わせて、おもちゃのピアノでジングル・ベルのメロディーを弾いた──。

いつ子さんは、多くの音楽家の名前を挙げて、「出会いが、大きな世界を開く鍵になった。神様というか、巡り合わせに感謝し、伸行を育ててくださったことに恩返しができれば」と言葉を重ねた。

作曲家・三枝成彰さん、指揮者・佐渡裕さん、ショパンコンクール出場を決めた頃から師事している横山幸雄・上野学園大教授。著名な音楽家にたどりつくまでの母としての果敢な行動力。その過程で出会った恩人たちが才能を引き出してくれた、との感謝の気持ちが、言葉の端々からうかがえた。

17歳で挑んだショパンコンクールでファイナルに残れなかった悔しさ。しかし今回のコンクールでは、リラックスして楽しんで弾いていたという。いま内外で演奏活動が続く。来年1月、横浜市と毎日新聞社共催の「クラシック・ヨコハマ 生きるコンサート」で、ナマの演奏を聴く日が楽しみだ。

ゲスト / Guest

  • 辻井いつ子 / Itsuko TUJII

    日本 / Japan

    作家 / Writer

研究テーマ:著者と語る『今日の風、なに色?』 『のぶカンタービレ!』

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