2009年07月15日 00:00 〜 00:00
水谷尚子・中央大学講師

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会見リポート

ウイグル人が顔を出せる社会に

太安 淳一 (共同通信外信部)

中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで7月5日に起きた大規模暴動。これまで中国から海外亡命したウイグル人への聞き取り調査を続けてきた中央大講師の水谷氏が、背景を語った。

同自治区は日本の約4倍の面積を有し、約900万人のウイグル族が住む。隣接するカザフスタンのカザフ人とほぼ同数で、タジキスタンのタジク人やキルギスのキルギス人よりも多い大規模な民族集団だ。中国は漢民族主体の国家に組み入れ、少数民族と呼んでいるが、世界から見れば決して少数ではない。

その文化も、中央アジアからトルコにかけてのテュルク系民族に近く、ウイグル語とウズベキスタンのウズベク語は、東京弁と大阪弁の差ほどの違いしかないのだという。中国の少数民族の中でモンゴル族、キルギス族などはみな中央ユーラシアに国家を持っており、「国家を持たない巨大な民族集団がウイグル族ということになる」との指摘は、独立運動の大きな背景として理解できた。

中国当局は独立派をテロ組織と認定しているが、水谷氏は「アルカイダなどのテロリストとは一線を画して考えるべき」と指摘。ウサマ・ビンラディンの下にいたとされる人物のイスラムの師匠が「イスラム法に則った国を造ろうというのではない。今のように我々の土地で漢民族に支配されなければそれでいい」と水谷氏に語ったと言う。普通のウイグル族が共有する感情なのだろう。

日本に住むウイグル人約1千人にも話は及んだ。欧米と違い、彼らの政治亡命を基本的に受け入れない日本では中国大使館への抗議活動などで顔を出せば、帰国後すぐ捕まる。今回も一部のウイグル人はマスクなどで顔を隠した。「ウイグル人が顔を出して主張できる社会にしたい」と水谷氏は呼び掛けた。

ゲスト / Guest

  • 水谷尚子 / Naoko MIZUTANI

    日本 / Japan

    中央大学講師 / Lecturer, Chuo University

研究テーマ:ウイグル情勢

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