2009年07月10日 00:00 〜 00:00
萩原雅之・ネットレイティングス社エグゼクティブ・フェロー

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会見リポート

世論調査のハイブリッド化を提唱

柿崎 明二 (共同通信政治部)

永田町における報道各社の世論調査の力は年々、強くなった。内閣支持率がときの政権の最期を告げる「死に神」役を果たすようになって久しいが、安倍晋三氏以降三代の自民党総裁の選出過程では、勝者を指し示す「女神」役も果たすようになった。誇張かもしれないが世論調査は日本の最高権力者の生死を司る「神」となった感がある。

問題は、誰が神たらしめているかである。それは「世論の支持」を総裁の条件としてしまった自民党の国会議員であり、同様の党首選びを続けてきた民主党の国会議員である。世論調査の数値に関する話をしない日はないという現状はさながら「世論調査中毒」であるが、それは世論調査を政局報道の中軸として位置付けているわれわれ報道機関も同様のような気がする。

インターネットなど新たな調査方法を模索してきた萩原氏は、「世論調査だけは(ネット調査化に)歯止めがかかっている。良心がある」とする一方、電話や面接など従来の手法によっている世論調査にも「歪み」が出ていると指摘する。家族や個々人の生活形態、調査に対する個人の意識変化によって、対象が、「平日の日中、家にいる人」、具体的には主婦や高齢者に偏り、さらには調査曜日にこだわらなくなった報道各社の姿勢がそれに拍車をかけている、という。

その上で「固定電話を持たない若年層の意識をどうとらえるか」と問題提起した。さらに具体策として、電話、面接、郵送、ネットなど対象者側が答えやすい方法を組み合わせる「ハイブリッド」を提唱した。

ハイブリッド化は、世論調査の「正しさ」に対するわれわれの意識の変化を誘発するかもしれない。その変化を否定的にばかりとらえる必要はないだろう。世論調査を相対的にとらえることにもつながるからだ。

「中毒」から抜け出す機会としてもハイブリッド化に取り組む意義はあると思いながら講演を聴き終えた。

ゲスト / Guest

  • 萩原雅之 / Masayuki HAGIWARA

    日本 / Japan

    ネットレイティングス社エグゼクティブ・フェロー / Executive Fellow, NetRatings Japan Inc

研究テーマ:世論調査

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