会見リポート
2009年07月06日
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奥村倫弘・ヤフーR&D統括本部編集本部メディア編集部長
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会見リポート
転換期を迎えるニュースサイト
日高 徹生 (読売新聞IT事業部)
奥村さんは自らの仕事を「報道機関がぜひ世に問いたいものを取り上げている」と説明し、取材する機能は持たないものの「メディア」であると繰り返し強調。記事に盛り込まれなかった独自の情報をネット内で集めて、加味することで読者の知的関心にこたえていると胸を張った。
会見の後半には、自らのジレンマの吐露が続いた。読売新聞記者としての経験を踏まえ、「社会に向けて警告を発する存在としてニュースがある」と話す。しかし、ネットの中では閲覧数の多寡が優先し、大事なことが伝えられていないと嘆く。一例として2008年2月のコソボ独立をあげた。新聞各社が1面で大きく取り上げたにもかかわらず、トピックスのアクセスシェアは全体の2%程度。ネットの世界では「コソボは独立していない」と自嘲ぎみに語った。
ヤフーニュースは広告収入で成り立っているため、読んでほしいものよりも読まれるものを掲載したほうが収入は増える。実際、芸能やスポーツの閲覧数は格段に多いという。「お客(ユーザー)が喜ぶことを考えて、(掲載する)ニュースを選ぶのは危険だ」。読者迎合の傾向が強まれば、情報格差や知識格差が拡大するとの懸念を抱き、「読者に迎合した会社になったら(今の仕事を)辞めます」とまで言い切った。その上で、メディアとしての社会的責任を果たすため、「報道機関が培ってきたニュースの価値を保ちたい」とした。報道機関と一線を画すことで存在感を増してきたニュースサイトが、転換期を迎えているのかもしれない。
ゲスト / Guest
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奥村倫弘 / Michihiro OKUMURA
日本 / Japan
ヤフーR&D統括本部編集本部メディア編集部長 / Media Editing Director, Editing Head Office, Unification Head Office, Yahoo Japan Corporation
研究テーマ:雑誌・ネット・報道