2009年07月17日 00:00 〜 00:00
西平重喜・日本世論調査会理事

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会見リポート

世論調査への過大な期待に警告

峰久 和哲 (朝日新聞編集委員)

戦後まもなく、GHQの指導のもとで「日本人の読み書き能力調査」が実施された。「無作為抽出法」が全国規模で初めて採用された調査であり、西平さんはこの調査に携わったのをきっかけに、日本の世論調査の基礎を固める仕事を積み重ね、重鎮として活躍を続けてこられた。早大で26年間にわたり「社会調査」の講義を担当されたので、会員の方々にも「門下生」が多いはずである。

そんな西平さんが、今の世論調査の実態を見て、どう思われるか。山ほどお叱りを受ける覚悟だった。

まず驚いた。「日本人は世論調査に向かない」と言われるのである。「日本人は、はっきりした意見を持ち、話す習慣がなかったし、そういう教育を受けていない」「日本語は西欧の言語のようにYes、Noで答える構造ではない。日本人で『いいえ』と、ちゃんと答える人は、ほとんどいないでしょう」。だから日本では世論調査といえば「『意見』ではなく、『感じ』の調査だ」とおっしゃる。

「日本の世論調査は、賛否を尋ねただけでは満足せず。賛否の理由について追い打ちをかけなければ意味がないといわれるが、そんなことをして相手を困らせないでほしい」

西平さんがそこまではっきりおっしゃるのは、学者の中ではずば抜けて「現場」の経験を数多く積まれているからである。日本で世論調査にかかわる多くの学者は、調査結果の分析に夢中になるあまり、調査の現場に無頓着であり、調査の方法論についても無関心である。そんな中で、西平さんの存在は大きい。

西平さんは今の世論調査の現状について、こう話される。「世間の期待は強すぎて、とてもそれに応じきれない。賛否が五分五分か、6対4か、7対3に割れているかが分かればよいのではないだろうか。世論調査は勝負審判を務めようとしているわけではないし、結論を与えるものでもない」

ゲスト / Guest

  • 西平重喜 / Shigeki NISHIHIRA

    日本 / Japan

    日本世論調査協会理事 / Director, Japan Association for Public Opinion Research

研究テーマ:世論調査

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