2009年06月30日 00:00 〜 00:00
松永泰行・東京外国語大学准教授

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会見リポート

イラン体制の質的変化を説く

脇 祐三 (日本経済新聞論説副委員長)

大統領選後のイランの政治対立が、連日大きく報道される中、OB会員も含め熱心にメモを取る人が目立つ研究会だった。

その研究会で松永氏は、革命後30年のイランの構造変化を、革命世代と第2世代の主導権をめぐる争いを軸に、論理的に説いた。

大統領選で不正があった否かにかかわらず、「アフマディネジャド大統領の再選は確実だったろう」というのが松永氏の基本的認識だ。イランへの関与・対話政策を打ち出した米オバマ政権も、イランの政権継続を織り込んでいたように見える。

今のイラン政権は、最高指導者ハメネイ師がアフマディネジャド大統領ら革命防衛隊人脈の第2世代と連携する体制だ。そして第2世代は革命世代の有力聖職者の特権階級化を糾弾し、非聖職者が主導権を握ることで革命体制を維持しようとしている。政治の変化の背景にある世代間の対立軸を、松永氏は印象づけていた。

大統領選の直前のテレビ討論で、アフマディネジャド大統領は「過去24年間の老世代の統治が残した問題と、私は過去4年間闘ってきた」と訴えたという。その結果が、テヘランと辺境地帯以外での大統領の圧勝をもたらした、と松永氏は整理する。

大統領選後の政治危機の展開として、①短期的には最高指導者ハメネイ師が改革派を抑えて勝利する②中期的には第2世代の非聖職者が主導権を握るが、第2世代とハメネイ師の摩擦も起き得る③長期的には第2世代の治安保守勢力と自由化を望む勢力の争いになり、今回の選挙でムサビ元首相を支持した都市中間層の勝利もあり得る──これが松永氏の基本的な読み筋だ。

IT革命に伴う政治環境の変化も含め、イランの政治構造の変遷と革命体制の質的変化を門外漢にもわかりやすく伝えた研究会といえる。

ゲスト / Guest

  • 松永泰行 / Yasuyuki MATSUNAGA

    日本 / Japan

    東京外国語大学准教授 / Associate Professor, Tokyo University of Foreign Studies

研究テーマ:イラン大統領選挙後の政治危機を読む

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