2009年06月19日 00:00 〜 00:00
ホーシュヤール・マフムード・ズィーバーリー・イラク外相

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会見リポート

治安の改善強調…厳しい現実

出川 展恒 (NHK解説委員)

2005年11月以来、2度目の訪日となったズィーバーリー外相。記者会見の冒頭、「この4年間でイラクは劇的に変わった。前回は、治安も経済も最悪で、暗雲が立ち込める中での訪日だったが、今回、私は、イラクの将来に自信と希望を抱いている」と強調した。そのうえで、「日本がこれまでイラクの復興に果たしてくれた役割は絶大で、心から感謝している」。

「今年1月には、両国政府の間で、『包括パートナーシップ宣言』も署名され、関係は新しい段階に入った。これからは、日本の企業やビジネスマンの皆さんにイラクに来ていただき、投資や貿易を積極的に進めてもらいたい。治安は目覚ましく改善しているので大丈夫だ」と訴えた。

会場からは、米軍撤退後の治安維持や汚職の蔓延、クルド自治政府と中央政府の対立など、質問が相次いだ。これに対し、外相は、「イラク分裂の危機は去った。民族・宗派の違いを越え、統一国家イラクを発展させることで国民は一致している。治安は自力で守れるし、汚職も必ず撲滅する」と、一つ一つ丁寧に答えていった。

しかし、現実は厳しい。この会見の翌日から、北部のキルクークや首都バグダッドなどで爆弾テロが相次ぎ、約300人が死亡し、米軍戦闘部隊の都市部からの撤退期限である6月30日を前に、再び治安が悪化している。民族・宗派間の対立の火種も残ったままだ。

「外相の発言は、楽観的すぎるのではないか」とも感じたが、こう思い直した。「どんな状況でも希望を捨てず、現実を冷静に見据えたうえで最善を尽くす。常に明るさを忘れない」─少数民族クルド人でありながら、混迷する新生イラクの外相の重責を担い続けてきた秘訣は、まさにここにあるのだろう。

ゲスト / Guest

  • ホーシュヤール・マフムード・ズィーバーリー / Hoshyar Mahmoud Zebari

    イラク / Iraq

    外相 / Minister of Foreign Affairs

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