2009年05月27日 00:00 〜 00:00
服部倫卓・ロシアNIS貿易会・経済研究所次長

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会見リポート

旧ソ連2カ国の経済・政治情勢

佐々木正明 (産経新聞外信部)

大統領の名前に「~ェンコ」がつく旧ソ連諸国がいま、勢力圏をめぐる欧州とロシアの綱引きの場となっている。1つは「欧州最後の独裁者」ルカシェンコ大統領率いるベラルーシ。もう1つは「オレンジ革命」の立役者、ユシチェンコ大統領率いるウクライナ。研究会では、現地に滞在した経験や様々なデータをもとに、両国の経済情勢や政治状況が詳しく説明された。

2国は別々の道を歩んでいる。ベラルーシは今も、社会主義時代の国営経済を維持しており、GDPに占める民間部門の比率は30%しかない。「市場経済化では落第生」だ。ルカシェンコ大統領がロシアへの依存度をさらに高め、独立後の不況からいち早く経済を回復させたが、「昔のやり方を引きずったままで、新技術導入や設備の近代化は置き去りになっている」という。

一方、ウクライナは独立後、欧州の仲間入りを目指した。しかし、現状を「経済危機、エネルギー危機、政治危機が同時進行しており、これだけ悪い条件が重なっている国も世界でも例が少ない」と説明。特に、政治情勢については、「流動化よりも液状化だ」と指摘し、「政治家はこの危機を一致団結して乗り越えるよりも、政敵を引きずり降ろすことに終始している」と解説した。

欧州連合はいま、両国と「東方パートナーシップ」を組み、ロシアのくびきから離脱させようともくろんでいる。しかし、両国にはロシア系住民も多く住んでおり、今後の欧州との関係について、「ロシアを敵にまわしたままでは大きく進展しないのでは」との見解も示した。

2012年、ウクライナではポーランドとの共催でサッカー欧州選手権が開催される予定だ。「危機が続けば権利が剥奪される恐れがあり、選手権の開催はウクライナ経済が回復したかどうかの目安になる」と指摘したことが非常に興味深かった。

ゲスト / Guest

  • 服部倫卓 / Michitaka HATTORI

    日本 / Japan

    ロシアNIS貿易会・経済研究所次長 / Assistant Manager, Economic Institute, Japan Association for Trade with Russia & NIS

研究テーマ:ウクライナ、ベラルーシ、モルドバの経済情勢

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