2009年05月22日 00:00 〜 00:00
古幡哲也・石油天然ガス・金属鉱物資源機構石油開発支援本部調査役

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会見リポート

カスピ海パイプライン・ビジネス

今井 伸 (毎日新聞出身)

世界のエネルギー上流部門の調査を専門とする古幡さんは、カスピ海周辺に雨後のタケノコのごとく計画されているパイプラインの進捗状況を「どれも船頭多くして舟、山に登るようなことが多い」と言う。

カスピ海は日本とほぼ同面積の世界最大の塩湖だ。キャビアだけでなく、日本の教科書にも載っているバクー油田によって石油生産でも知られてきた。近年は、石油・天然ガスの埋蔵量が、ペルシャ湾、シベリアについで3番目に大きい(1、2位とは差があるが)ことが確認されたため、注目を集めている。

一昔前は、ソ連とイランにはさまれた湖という認識だったが、ソ連解体により、沿岸にアゼルバイジャン、カザフスタン、トルクメニスタンの3国が誕生し、複雑になった。海底(湖底?)の資源は誰のものか、誰が開発・生産するのか、どの国を通過してどこ(買い手)の方向にパイプラインを建設するか、などなど。研究会後の出席者の反応は「新聞記事を読んでもなかなかピンと来なかったが、ようやく理解できた」とおおむね好評だった。ただ、今後の予測は難しい。そういう中で、東つまり中国に向けたガスパイプライン整備は急テンポで進んでいると古幡さんは指摘。こちらは、船頭が少ないから。ビジネスとは別の国家の意思が感じられるという。

一般論だがロシアをめぐるエネルギー報道と専門家の見方は微妙に違う。地政学的視点や売る側の強引な振舞いを強調する報道が少なくないが、専門家は冷静に見る。「売る側も買い叩かれないよう苦慮」「パイプラインを計画しても、安定した供給源と買い手の両方を確保しないとファイナンスがつかない」。欧米は供給源とパイプラインでつながっている。石油も天然ガスも船に乗ってやってくる日本でパイプラインビジネスを理解するには、このようなプロの見方は貴重だ。

ゲスト / Guest

  • 古幡哲也 / Tetsuya FURUHATA

    日本 / Japan

    石油天然ガス・金属鉱物資源機構石油開発支援本部調査役 / JOGMEC

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