2009年05月18日 00:00 〜 00:00
ジョン・リプスキー・IMF筆頭副専務理事

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会見リポート

「強面」からの変化に期待

野島 淳 (朝日新聞グローブ記者)

世界的な金融危機を受け、国際通貨基金(IMF)は変身中だ。97~98年のアジア通貨危機の際、厳しい構造改革の要求を突きつけたのに十分な効果が上がらず、被支援国から批判を浴びた。いま、その「強面」はすっかり鳴りを潜める。「IMFは自ら改善し、危機から良い結果を引き出さないといけない」というリプスキー氏の言葉が、IMFの変貌ぶりを象徴していた。

IMFには「危機を未然に防ぐための道具立て」が不足していたという。今年3月、新たな融資枠を設けた。被支援国がIMFの厳しい要求を恐れて支援要請をためらわないよう、融資条件を緩めたのだ。早めに支援要請をしてもらえれば、危機の拡大を抑えられる。

「こうした道具立てを97~98年(のアジア通貨危機のとき)に持っていたら、成果を上げられただろう」と、素直な反省の弁も出てきた。

5月に増額が決まった東アジアの通貨スワップ協定「チェンマイ・イニシアチブ(CMI)」については、IMFの機能を補完する意味で「新たな協力の道ができる」と歓迎した。ブロック化の動きに連動することにはくぎを刺したものの、アジア通貨基金(AMF)のような考え方も、否定はしなかった。

世界はますます相互依存が強まっている。地域的な金融協力の枠組みとIMFの施策が連携しなければ、深刻な危機には対応できないという考えがにじみ出ていた。

いまでは、融資条件が甘過ぎると構造改革を促さないという批判も出るくらいだ。それほど、IMFは自らの存在意義と立ち位置を定めるのに試行錯誤しているのかもしれない。

「IMFは新しい世界の現実に迅速に対応していく」と、リプスキー氏は結んだ。今年いっぱい、世界は厳しい経済状況が続きそうだ。中東欧など不安定な地域もある。「変化」の成果を注視したい。

ゲスト / Guest

  • ジョン・リプスキー / John Lipski

    アメリカ合衆国 / USA

    IMF筆頭副専務理事 / Lead Vice-Senior Director, IMF

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