2009年05月12日 00:00 〜 00:00
明石康・スリランカ平和構築および復旧・復興担当日本政府代表

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会見リポート

政治和解がカギに変わりなし

濱本 良一 (読売新聞論説委員)

スリランカで4半世紀余り続いた武装ゲリラ「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」と同国政府軍との内戦は、政府軍がLTTEを武力制圧して、最終的に決着した。

会見は、制圧の4日前、独立を求めるLTTEが5万人に上る一般住民を「人間の楯」に立てこもる土壇場の緊迫した中で行われた。

スリランカの平和構築を目指す日本政府代表として7年目を迎えたこの人は、会見の冒頭に「内戦は最終局面を迎えたと言ってよい」と断言した。果たして事態は、その通りの展開になった。さすがはスリランカ情勢に通じた日本代表である。

今年1月の通算16回目のスリランカ訪問では、「自爆テロの元祖」LTTEの幹部から、スリランカ政府に停戦の意向を取り次いでほしい、と申し出を受けた。が、時すでに遅し。制圧可能と踏んだ政権側に、和解に応じる意思はなかった。

4月下旬から5月の17回目の訪問では、ラジャパクサ大統領ら関係者と話し合った。自ら「奥歯にものが挟まったよう」と断ったが、欧米諸国と人権団体が、問題を国連の場で審議するよう求めたのに対し、国際紛争解決の「匠」は、アジア的アプローチを粘り強く模索した。

穏やかな口調の会見の中で、自らの信念を語る瞬間があった。

「軍事的解決はあり得ない。一時的にせん滅されても、また治安を乱すだろう。政治的な解決が必要だ」

武力制圧が成功しても、人間の心までは制圧できまい。相手が納得する解決でなければならない。カンボジアや旧ユーゴスラビアの紛争解決の体験に基づく思いなのだろう。

少数派タミル人と多数派シンハラ人社会との間の深い亀裂は、さらに拡がった。スリランカ和平第2幕、国民和解と復旧・復興に向け、またこの人の出番が回ってきそうだ。

ゲスト / Guest

  • 明石康 / Yasushi AKASHI

    日本 / Japan

    スリランカ平和構築及び復旧・復興担当日本政府代表 / Japanese Government Representatives in Charge of Peace Building and Reconstruction and Rehabilitation in Sri Lanka

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