2009年04月22日 00:00 〜 00:00
田崎史郎・時事通信解説委員長「著者と語る『政治家失格』」

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会見詳録


会見リポート

オフレコ報道─葛藤と信念

石郷岡 建 (毎日新聞出身)

政治記者生活30年を振り返った新著『政治家失格』をテーマの講演だった。会場の関心は小沢一郎人物論とオフレコを破る意味に集中した。小沢氏については、「同じ失敗を繰り返す人」「ロッキード裁判闘争を抱えた故田中角栄首相の姿にダブって見える」という言葉がもっとも印象的だった。

個人的には、小沢氏の人物論よりも、政治家のオフレコ情報をめぐる著者の葛藤の話が興味深かった。

オフレコは、「相手の了解なしには絶対発表してはならない」との報道モラルの立場と、「自分の知りえたことは何らかの形で伝えなければならない」との考え方が対立する。

そこで、著者は、○1ひとつの政局が終わった時○2取材対象が死亡した時──は、オフレコを明らかにしてもよいのではないかと、「オフレコにも時効がある」との考え方を提示する。

会場からは「オフレコは墓場まで運んでくれなければ、われわれの立つ瀬がない」と、訴える元社会部OBの声も出た。しかし、著者は、書けばそれなりの抵抗や風当たりが強くなるかもしれないが、「それでも書かなくてはならないこともある」と回答した。

オフレコ論にからみ、政治部記者は政治家との「サシの取材」が重要であるとも主張した。2人だけしか知りえない会話をすべきだとの考え方でもある。どの社でも、政治部記者は、どこか秘密めいて、他部とはそれほど情報交流をしない雰囲気にある。権力中枢の機密に肉薄するとの使命感があるからなのだろう。

だからこそ、書かなければならないと主張する著者に共感し、拍手さえ送りたくなる。新聞記者は、書くことが仕事であり、書かなければ権力のインサイダーで終わってしまう。外見は穏やかで、優しい人物に見えるが、かなり信念の人であり、覚悟を知っている人とみた。

ゲスト / Guest

  • 田崎史郎 / Shiro TAZAKI

    日本 / Japan

    時事通信解説委員長 / Remarks Chairman, Jiji Press

研究テーマ:著者と語る『政治家失格』

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