2009年04月20日 00:00 〜 00:00
宗像紀夫・元東京地検特捜部長

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会見リポート

検察の捜査を監視せよ

杉谷 剛 (東京新聞社会部)

検察による西松建設事件の政界捜査をめぐっては、小沢一郎氏だけでなく、検察にも説明責任を求める声が強いが、「説明を求められること自体、捜査が国民の信頼を失っている」と古巣をばっさり切り捨てた。

東京地検特捜部に通算12年間在籍し、リクルートやゼネコン事件で国会議員の汚職を摘発しただけに、小沢氏の公設秘書逮捕には「表のカネの話であり、以前なら在宅で処理するような容疑事実で驚いた」。

半年以内に行われる総選挙で、政権交代が取りざたされていた最中の逮捕。他に裏金があるのか、秘書が談合に関与したのか、とにかく次の展開があるとみていたら、何もなかったので再び驚く。「これが政界を揺るがす事件なのかと、国民が疑問を持つのは当然」と手厳しかった。

西松側が小沢氏側に名前を隠して献金をしたのは、東北地方で公共工事の受注を有利に進めるためで、突出した献金は実質的な賄賂だった─検察幹部らは声を大にして、世間にそう言いたい心境だろうが、「それなら秘書を逮捕する前に、西松側から献金を受けた政治家を全員調べておくべきだ」と切り返した。

「検事時代は耳にたこができるほど、厳正公平と不偏不党という二つの四字熟語を聞かされた」。それを聞き、5年前の日本歯科医師連盟事件での政界捜査が思い浮かんだ。

特捜部は当時、自民党の大物議員らに渡った違法な迂回献金を捜査の過程で精緻に裏付けた。賄賂のばらまきのような極めて悪質な事案だったが、事件にすれば政権党に大打撃を与えると考えた検察上層部は、捜査の現場に立件を断念させた。このときは巨悪を見逃したのである。政局に大きな影響を与えた今回の捜査との落差はあまりに大きい。

「検察の力はものすごく強い。正しく検察権を行使しているか、マスコミが見ないといけない」。それが宗像紀夫氏の締めの言葉だった。

ゲスト / Guest

  • 宗像紀夫 / Norio MUNAKATA

    日本 / Japan

    元東京地検特捜部長 / Head, Special Investigation Department, Tokyo District Public Prosector's Office

研究テーマ:検察と政治

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