2009年04月10日 00:00 〜 00:00
堀田力・元東京地検特捜部検事

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会見リポート

国策捜査批判にきっぱり反論

玉木 研二 (毎日新聞論説室専門編集委員)

柔らかな語り口調は「秋霜烈日」検察バッジのイメージからは遠い。激動期に育った昭和ひとけた世代。ロッキード事件に腕振るった花の特捜検事。転じてさわやか福祉財団を興し、活動や提言にたゆみない。

東京地検特捜部の小沢一郎民主党代表の公設秘書らへの政治資金規正法違反捜査。その後輩たちの仕事に対する「国策捜査」批判に、氏は温和な言葉ながらきっぱりと反論する。また、規正法はとっかかりで狙いは贈収賄立件ではないかという見方にも「とても違和感がある。規正法違反は軽い形式犯ではないし、捜査のとっかかりでもない」とした。

それを一方的に、退官しても「検察一体の原則」か、と皮肉ってはフェアではあるまい。西松建設の摘発で証拠を収集、解析、聴取し、迫る時効を勘案しながら時系列的に見ると、今回の逮捕に不自然さはなく、順当な流れだと氏は言う。実務を知り抜いた人だけに説得力がある。  さらに規正法は穴だらけのザル法を改正で少しずつ穴を埋め、今日に至ったものだと強調。主柱は透明性の確保で、資金を国民の監視にさらし、是非を判断してもらうことが趣旨という。今回の内容は過去の摘発事例と不釣り合いはなく、国民の多くにも違和感はないとみる。

政治家個人への献金がやり放題だった時代は、その腐敗摘発には贈収賄を暴き出すしかなかった。だが仲間割れでもないと表面化はまれ。腐敗を正すには、資金の流れを透明にすることが不可欠という論法だ。

氏の解説に筋は通っている。とはいえ、捜査が政治情勢に影響したのは事実。間をおかず自民側にもとみられたがすんなりいかず、はた目にはスマートさに欠く展開になった。特捜は自身に「雑念」なくとも、常に政治とのかねあいで注目され、背景を深読みされるのが宿命だ。  そこらへんの「つらさ」も次の機会にもっと聞きたい。

ゲスト / Guest

  • 堀田力 / Tsutomu Hotta

    日本 / Japan

    元東京地検特捜部検事 / Public Prosecutor, Task force of the Tokyo District Public Prosecutors Office

研究テーマ:検察と政治

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