2009年03月27日 00:00 〜 00:00
オサマ・サラヤ・アル・アハラム紙編集長

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会見リポート

際限なき民主化は過激派政権を

藤原 和彦 (読売新聞出身)

アル・アハラム紙は日本の新聞とは異質なメディアである。1952年エジプト革命で誕生し、現在も続く(世俗的なアラブ民族主義)政権の主柱のひとつであり、その編集長は、現政権を代表する国家的イデオローグである……。

会の冒頭、筆者(司会者)がアハラム紙と同紙編集長のステータスについて、こんな紹介をすると、オサマ編集長は早速訂正・反論した。

オサマ編集長は、筆者の紹介は、前世紀半ばナセル大統領の側近ヘイカル氏が編集長を務めていたころの“古いアハラム観”とばっさり。現在の同紙は政府(政権)から独立した存在であり、報道の自由の下で政府批判も行っていると語った。

さらにムバラク現政府との具体的な関係については「政府が考えていることを一般大衆に伝え、一般大衆の声を政府に伝える」新聞であり、西側世界の新聞と異質ではない旨、強調した。

さて、オサマ編集長がスピーチで力説したことのひとつに「際限のない民主化はイスラム(過激)主義政権の誕生を招く」との政治認識、あるいは西側向け警告がある。

この認識は、西側、とりわけ米国の民主化圧力に抵抗する中東各国政権の論拠になっており、半面で、イスラム主義勢力にとどまらず、政府批判勢力を抑圧する各国政権の言い訳になっている。

オサマ編集長はまず「ヒトラー(の政権)は民主選挙によって選ばれた」と指摘。そのうえで、「イスラム過激勢力は民主選挙でいったん政権を握れば、二度と手放さない。さらに同政権がもたらす災難は、世俗的な独裁政権の災難をはるかに上回る」旨、警告した。

このほか、エジプトのアブデルナーセル駐日大使が参加されたことを付記したい。また、オサマ編集長のスピーチが精力的だっただけに、『イラク再生』(03年刊)の著書もあるアラビスト、新谷恵司さんの卓越した通訳に感謝したい。

ゲスト / Guest

  • オサマ・サラヤ

    エジプト / Egypt

    アル・アハラム紙編集長 / Editor in Chief, al-Ahram

研究テーマ:エジプト

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