2009年02月25日 00:00 〜 00:00
パスカル・ラミー・WTO事務局長

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会見詳録


会見リポート

日本も「ただ飯」は許されない

菅野 幹雄 (日本経済新聞編集委員兼論説委員)

総崩れの世界経済が回復軌道に戻れるのはいつか。自由貿易体制の「厨房」を預かると自任するラミーWTO事務局長は、その答えを左右する最重要人物の一人に間違いない。多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)が成功すれば地球規模で輸入関税が1500億ドル(約15兆円)削減され「飛躍的な回復への景気刺激策となる」と、早期の交渉妥結を訴えた。

国立行政学院(ENA)卒のフランスエリート。司会の紹介を受ける間、不要になったメモを手際よく破り、さっと片付けた。身振り手振りに無駄がなく、ポイントを突いて整然と話す。153加盟国の利害を束ねるシェフの合理主義をうかがわせる。

昨年11月のG20金融サミットではラウンド交渉の「年内の大枠合意」を宣言したが、合意には至らなかった。「80%は合意できたが、残る20%に複雑な相互作用がある」。農水産物の市場開放で守りに回る日本にも「WTOにフリーランチ(ただ飯)はない」と、譲歩を重ねて促した。

日本の交渉団について「極めてクレバー(利口)で、過去8回のラウンド交渉で日本はすべてゲイン(得点)した」と持ち上げつつ「最終的な態度決定をあまり長く待ちすぎない方がいい」とも。戦術におぼれるなよ、という忠告にも聞こえた。

自由貿易の流れを反転させる保護主義の誘惑を食い止めることもラミー氏の重責となる。米国の「バイアメリカン条項」のような自国優先の動きも目立つ。「レーダー画面のあちこちに兆候があるが、明るく光る点はない」と独特の表現で、ルール違反の存在をとりあえず否定した。

3月中旬には保護貿易の懸念がある各国の措置について第2弾の報告書を出す。「正しい事実を集めて適切な分析をしたい」。その眼光の鋭さが問われることになる。

ゲスト / Guest

  • パスカル・ラミー / Pascal Lamy

    世界貿易機関 / WTO

    事務局長 / Secretary-General

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