2009年02月13日 00:00 〜 00:00
田中均・日本国際交流センターシニア・フェロー

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会見リポート

外交は国益を伸長させるもの

笹島 雅彦 (読売新聞調査研究本部主任研究員)

大使ポストに就くことなく、外務審議官を最後に退官してから3年半。国際会議などのため、約60回に及ぶ海外出張を通じて視野を広げ、有識者らとじっくり議論を交わしてきた後、初の著作を書き下ろした。

ご本人は、「自分なりの外交論を作っていきたいと思った」と控えめに語る。しかし、これは、歴史の法廷で、被告人席に座る覚悟を持って書き上げた被告側弁論の書ではないか、と思う。第3章で、国内世論からの厳しい批判の矢面に立った日朝交渉を振り返り、「歴史が評価を決める」と、書きつづっているからだ。北朝鮮側の交渉窓口「ミスターX」の正体については明かしていない。

この本で伝えたかったメッセージは4点だという。第1には、できるだけ多くの人に外交を理解してもらいたい、ということ。第2には、受動的な外交では、日本が支払うコストは加速度的に大きくなるので、能動的外交が是非とも必要だということ。第3には、先進主要7か国(G7)と、新興国のBRICs(ブラジル、露、印、中)の力の差が埋まっていく中で、日本がどのような戦略で生きていくか、議論しなければならない、ということ。そして、G7を中心とする同心円と、東アジアの同心円を念頭において、日本の戦略を練る新たな構想を提示し、外交基盤の強化を訴えることだ。

「主張する外交」「自由と繁栄の弧」といったキャッチフレーズではなく、外交は「結果をつくり、日本の国益を伸長させるものだ」と断言する。そこには、歴代首相をチクリと批判しつつ、国益を守るため外交交渉に取り組んできた外交官としてのプロ意識をうかがわせる。国連を中心とする集団安全保障体制に積極的に参加するため、「集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈を見直さなければならない」と強調したくだりでは、発言に熱を帯びたのが印象的だった。

ゲスト / Guest

  • 田中均 / Hitoshi TANAKA

    日本 / Japan

    日本国際交流センターシニア・フェロー / Senior Fellow, Japan Center for International Exchange

研究テーマ:著者と語る

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