2009年02月23日 00:00 〜 00:00
廣瀬陽子・静岡県立大学准教授「ユーラシア(3)」

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会見リポート

アゼルバイジャンの独自路線

名越 健郎 (時事通信外信部長)

石油資源を持ち、地政学的要衝にあって注目を集めるアゼルバイジャンの知られざる歴史、民族、政治、経済の実態を多角的に紹介。大学の上質な講義を聞いた感じだった。

昨年8月のロシアとグルジアの戦争は、軍事緊張や難民流出、経済破綻など域内に大きな打撃をもたらしたが、「地域全体としてはプラス面もある」とし、トルコとアルメニアの関係改善、コーカサス安定協力プラットフォームの進展、アルメニア・アゼルバイジャン間のナゴルノカラバフ紛争の改善を挙げた。

アゼルバイジャンは石油収入で高度成長を続けながら、貧富の格差が広がり、政治はイルハム・アリエフ大統領の恒久独裁化が進む。「大統領の父、故ヘイダル・アリエフ大統領のカリスマに支えられた独特の権威主義」は北朝鮮と似ているが、民衆の安定志向、西欧的価値への不信感、野党の不振などから「それなりの正当性を持つ」という。

ソ連解体前後からの内政混乱、アルメニアとの長年の紛争、地方の民度の低さもアリエフ王朝の後ろ盾のようだ。ウクライナやグルジアなど旧ソ連で続いた「カラー革命」は起こりそうもない。

アフガニスタン安定化を重視するオバマ米政権は、閉鎖された在キルギス空軍基地に代わる対アフガン作戦基地をこの地域で模索中だが、「アゼルバイジャンは憲法で外国基地の設置を禁止しており、米軍基地を受け入れることは100パーセントない」と指摘した。

アゼルバイジャンは近年、グルジア、ウクライナ、モルドバと親米派地域連合「GUAM」を構成したが、グルジア戦争後はロシアへの傾斜が目立ち、対米関係は後退しているという。一方で、石油資源開発で西側との協力も不可欠。「欧米にもロシアにも接近しすぎない独自路線を継続する」ようだ。

ゲスト / Guest

  • 廣瀬陽子 / Yoko HIROSE

    日本 / Japan

    静岡県立大学准教授 / Associate Professor, University of Shizuoka

研究テーマ:ユーラシア

研究会回数:3

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