2008年12月01日 00:00 〜 00:00
武藤敏郎・大和総研理事長

申し込み締め切り


会見リポート

日米の危機対応に苦言

河原 仁志 (共同通信経済部長)

財務事務次官時代は「存在感たっぷりの黒子」。決して主役を食うことはしないが、いやがうえにもその輪郭は目立ってしまう。小泉政権時代、あの政策も、その仕掛けも「武藤さんが汗をかいたらしい」と言われたものだ。それでも、自ら汗の経緯を語ることはほとんどなかった。

日銀総裁人事の騒動を経てシンクタンクにフィールドを得た後は、「黒子」と180度違う「発信者」に。この日の講演も最初は抑制を利かせていたが、途中から新しい顔が端々にのぞいた。

「原則なき対症療法という感じがぬぐえない。財務長官とFEDの連携がどうなっているのか」「不良資産の買い取りと公的資金注入はワンセットだと思っていた。ポールソン(米財務長官)のやり方は中途半端」。

揺れ動く米政府の危機対応に苦言を呈した後、その矛先は日本の経済対策にも及んだ。

「足元の痛み止めは政治的には必要だが、これから日本がどういう役割を演じるのか、そういう分野に集中投資しなければならない」。金融危機の後に来るのは単なる不況ではない。経済秩序のパラダイム転換なのだ、という思いがあるのだろう。

霞が関、永田町の調整作業から開放されたからなのか、財務次官、日銀副総裁時代に比べ表情も幾分柔和になった。複雑な先端金融商品を理解する有能な監督者が行政にいるのか、という問いには「そういう人を雇うには(国家公務員の)給与体系が合わない」と言って笑わせた。「(当局が)複雑さにつき合い過ぎた面もある。(投資家も)今はFLIGHT TO SIMPLICITY(単純志向)だ」との指摘は、政局に翻弄された果ての自身の心境を映しているようにも聞こえた。

ゲスト / Guest

  • 武藤敏郎 / Toshiro MUTO

    日本 / Japan

    大和総研理事長 / President, Daiwa Institute of Research

研究テーマ:金融危機

ページのTOPへ