2008年12月17日 00:00 〜 00:00
ドナルド・キーン・文学者・評論家

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会見リポート

ユーモアたっぷり日本文化論

藤原 作弥 (時事通信出身)

源氏物語千年紀の年に文化勲章を受章したドナルド・キーン氏。祝賀会を兼ねた昼食会でのスピーチは日本との出会いの思い出話から始まった。

コロンビア大学で日本文学を研究していた縁で米海軍情報将校として応召され、1945年8月15日、グアム島で玉音放送を聞く。よく聞き取れなかったが、取り調べを担当した3人の日本兵捕虜が泣き出したので内容を知った。同年12月、横須賀に上陸、初めて日本を見たが、まず訪れたのは日光。それは「日光を見ずして結構と言う勿れ」という日本の言い伝えに従ったからとのこと。ことほど左様にキーンさんの日本文化論はユーモアあふれるエピソードに満ちた2時間だった。

京大留学時代は京都郊外の国宝級日本邸宅での下宿生活。隣はアメリカ帰りの助教授ということだったのでお互いに敬して遠ざけていたが、その人が国際政治論の永井道雄氏。永井氏に中央公論社長の嶋中鵬二氏を紹介されてから、永井荷風、谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫…と錚々たる作家の知己を得ていった。(三島由紀夫はキーン氏に、金メダルで1位をもらえるスポーツの世界がうらやましい─と述べ、ノーベル賞への執念を打ち明けていたという)。

日本に関心を持ったのはコロンビア大学で「日本学」を講じていた亡き角田柳作教授の影響だったが、古典文学にのめり込んだのは、ニューヨークの本屋で売れ残りの『源氏物語』(上下二巻、A・ウェーリー訳)を49セントで買ったのがきっかけ。

その源氏物語以来日本語も大きく変わってきたが、日本語の危機について尋ねるとキーンさんは「言語は変わるもの。しかし、日本語と日本文化が滅びる恐れはありません」ときっぱり言い切った。

ゲスト / Guest

  • ドナルド・キーン / Donald Lawrence Keene

    アメリカ / USA

    文学者・評論家 / Japanologist, scholar, teacher, writer, translator and interpreter of Japanese literature and culture

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