会見リポート
2008年11月21日
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吉川洋・社会保障国民会議座長
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会見リポート
社会保障改革に明確な方向性を
稲葉 康生 (毎日新聞論説委員)
ソフトな語り口、例え話を織り込みながらの分かりやすい説明、そして何より、改革を前に進めたいという熱意が伝わってくる会見だった。
政府の社会保障国民会議座長であり、経済財政諮問会議の民間議員である吉川さんは、今後の社会保障改革を進めるキーマンの一人。年金制度については、現行の社会保険方式と全額税方式との二つの考え方があるが、「国民会議の最終報告書は両論を併記した。まずは基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げることで合意し、その後、みんなで議論をすればいい。すぐに決めることはない」と主張。与党内に全額税方式の論者がいることもあってか、国民会議の報告書と同様、明確な方向性は口にしなかった。それでも「全額税方式については詰めなくてはならない問題がある」とし、消極的なニュアンスをにじませた。
医療については、同国民会議がまとめた改革の方向について「絵に描いた餅にしないためにも、工程表を作りたい」と語った。報告書は医療のあるべき姿を示して「改革を行うには、いくらかかる」という推計を示したが、改革の中身についての国民的な議論はこれからだ。具体的な中身を示さずに推計数字だけが一人歩きした感もあり「消費税アップへの地ならし」との観測も出ている。
「この国の社会保障は大丈夫?」。こうした国民の声に、明快な方向を示さなければ、将来不安は解消できない。そんなことをあらためて考えさせられた会見だった。
ゲスト / Guest
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吉川洋 / Hiroshi YOSHIKAWA
日本 / Japan
社会保障国民会議座長 / Chairman, National Council for Social Security