2008年10月30日 00:00 〜 00:00
ハルン・アミン・駐日アフガニスタン大使


会見リポート

復興と対テロ戦争の厳しい現実

石合 力 (朝日新聞外交国際グループ次長)

01年の米同時多発テロ事件の直前に暗殺された北部同盟の指導者マスード将軍の側近で米国育ち。40歳手前の若き大使が流暢な英語で最初に強調したのは、悲観的な報道が多いなかでの自国の復興ぶりだ。タリバーン政権崩壊後、就学児童生徒数が100万人から700万人に。独立系のテレビやラジオが増え、国会議員の28%を女性が占める──。

その一方で、厳しさを増す「対テロ戦争」の現実も直視した。今年に入って毎月平均500件を超す暴力事件が発生、6、7月の兵士の死者数だけで、今年のイラクでの全兵士死者数を上回ったという。8月に拉致・殺害されたペシャワール会の伊藤和也さんについても「特に心にとどめている」と言及した。

「軍事的には、資源、兵力、対テロ戦争の地理的範囲について大規模かつ根本的な見直しを直ちにする必要がある」

対テロ戦争はアフガンだけでなく、パキスタンも含めるべきだというのが持論。その隣国でザルダリ新政権が対テロ戦争を自らの戦争として取り組む姿勢を見せたことを「前任のムシャラフ氏が7年間できなかったことを1カ月で成し遂げた」と評価した。政治面での課題として挙げたのは①国際テロ組織アルカイダとタリバーンの区別②穏健タリバーンの政治参加③アフガンとパキスタン両国にまたがる平和ジルガ(部族会議)開催の3点。

昨年のテロ特措法延長議論のさなか、当時は比較的平穏だった北部地域への自衛隊派遣を政府、野党双方に打診した大使だが、この日は補給支援特措法が延長の方向であることに謝意を示したうえで「日本の国内政治を再び機能不全にさせる問題として使われるべきだとは思わない」と慎重な言い方にとどまった。


ゲスト / Guest

  • ハルン・アミン

    アフガニスタン / Afghanistan

    駐日大使 / Ambassador to Japan

ページのTOPへ