2008年10月29日 00:00 〜 00:00
隈部兼作・ロシア・ユーラシア政治経済ビジネス研究所代表「ロシア」15

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会見リポート

チャンス到来

池田 元博 (日本経済新聞編集委員)

米国発の金融危機の嵐が世界を襲っている。有望な投資先とされてきた「BRICs」(ブラジル、ロシア、インド、中国)も例外ではない。特にロシアは株式相場が5月の年初来高値から約7割も下落した。ロシアは再び、1998年のような金融危機に見舞われるのではないか──。

現地で収集した情報と、豊富なデータをもとに分析する隈部氏の結論は「ロシア経済は当面、持ちこたえられる。ロシアが倒れるときは他の多くの国々が倒れている」。98年のように債務不履行(デフォルト)に陥るようなことはないだろうが、V字型の経済回復も難しい。

プーチン政権が誕生して以降、資源大国ロシアは原油相場の高騰の恩恵を受け、年率平均7%という高い経済成長を達成してきた。外貨準備高は約5千億ドルと、世界3位を誇る。強面のプーチン氏の「強いロシア」路線もあって、近年は自信を回復したロシアの高圧姿勢が目立っていた。

典型がグルジア紛争だ。メドベージェフ大統領は紛争直後、「新冷戦も恐れない」と表明。米欧との全面対立も辞さない強気の態度を見せていた。そんな折に直撃した金融不安の嵐。ロシアはやはり一国では生きられない。ロシア首脳の強気の発言も急速にトーンダウンしている。

今回の金融不安は、鼻高々だったロシアが頭を冷やす転機になるかもしれない。隈部氏は「チャンス到来」と語る。ひとつはロシア自身が銀行改革や投資環境の整備といった経済改革に真剣に取り組む好機、もうひとつは日ロが対等な立場で話をし、関係を発展させる好機が訪れたというのだ。

日本ではロシアを色眼鏡で見る傾向があるが、ロシアをどう位置づけていくかは国際戦略上、重要な課題だ。「ロシアを好きか嫌いかで判断せず、是々非々で見てほしい」。隈部氏の指摘は確かに耳が痛い。

ゲスト / Guest

  • 隈部兼作 / Kensaku KUMABE

    日本 / Japan

    ロシア・ユーラシア政治経済ビジネス研究所代表 / Representative, Russia, Eurasia Institute of Political Economy & Business

研究テーマ:ロシア

研究会回数:15

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