2008年10月16日 00:00 〜 00:00
ティティナン・ポンスティラク・チュラロンコン大学安全保障国際問題研究所長

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会見リポート

伝統的なタイVS新しいタイ

大熊 慶洋 (共同通信外信部)

穏やかな笑顔を絶やさない人々、日本とは1テンポも2テンポも違う、ゆったりとした時間の流れ…。そんな「ほほ笑みの国」タイはこの3年間、政治の混乱に翻弄され続けている。

タクシン首相(当時)の打倒を掲げる2005年の大規模抗議デモに始まり、06年9月の軍によるクーデター、暫定政権発足と民政移行、抗議行動の再燃など、揺れる近年のタイ政局は日本でも大きく報じられている。バンコクの首相府は8月から現在に至るまで市民団体により占拠されたまま。10月7日には警察によるデモ隊の強制排除で多数の死傷者が出た。クーデター再発の噂も消えない。

タイ・チュラロンコン大のティティナン准教授は、混迷するタイ政治のメカニズムを明快に解き明かす気鋭の国際政治学者だ。同国英字紙バンコク・ポストなどで評論活動を行い、日本を含む外国メディアにもしばしば登場、外国人にとってのタイ政治のガイド役となっている。

ティティナン氏は現在のタイ政治の混乱を、国王や軍、官僚らエスタブリッシュメントに代表される「伝統的なタイ」と、新興のビジネス、政治勢力による「新しいタイ」との対立と分析する。新興ビジネス勢力の代表的な存在ともいえるタクシン氏が、地方の農民らの支持を背景に強大な権力を得たことが、現在のような対立を顕在化させた─との見方だ。

タクシン派の現ソムチャイ政権は抗議行動の激化になすすべもなく、現状では伝統勢力が優位を保っているようにみえる。しかし「(この勢いは)今後はもたない」とティティナン氏は言う。「みなさんの知っている(伝統的な)タイは終焉(えん)に向かっている」。新しいタイはいつ、どのような形で生まれるのだろうか。

ゲスト / Guest

  • ティティナン・ポンスティラク

    タイ / Thailand

    チュラロンコン大学安全保障国際問題研究所長 / Security Director, Institute of International Affairs, Chulalongkorn University

研究テーマ:タイの政治情勢と米金融危機の影響

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