2008年09月16日 00:00 〜 00:00
岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長

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会見リポート

パンデミック その時への備え

小仲 秀幸 (日本経済新聞社会部医療担当部長)

新型インフルエンザへの関心が、ようやく高まってきたようだ。新聞やテレビで対策をめぐる議論が紹介され、一部の自治体や大企業では、「その時」への備えを検討する動きが出てきた。

「パンデミック(大流行)はいつ来るのか」「規模、致死率は」。こうした問いへの明確な答えはないが、スペイン風邪など過去の流行経験をふまえ、専門家からある程度の予測は提出されている。

むしろ問題は、岡部氏の言うように100%の安全を求めるのか、それとも何もしないのか、あるいは10─20%の範囲でもいいから対策を講じるのか、だろう。これは、医学的観点だけでなく、我々の社会の仕組みや文化、行政上から見た実現可能性、それに必要なコストを総合的に考えたうえでの判断にかかってくる。

さらに、少数の患者の発生段階でとる対策と、患者が広がった場合の対策も、分けて考える必要があるという。岡部氏の今回の話の中では、この「ある時期からの発想、作戦の大転換」の重要性と、その難しさを特に感じた。

例えば、備蓄された抗インフルエンザ薬を、最初のうちは予防的に投与するが、ある段階からは、「治療に使うので、予防的に飲むのはやめてくれ」と方針を変えることが議論されている。水際での検疫も、ある程度患者が国内に入ってきたら、それ以上強化するのはやめる可能性もあるという。そうなるとしたら、「その説明は、相当うまくやらなければならない」と岡部氏は強調する。

パンデミックは、人類にとって大きな「災害」だ。具体的な感染対策と同時に、事前の「リスクコミュニケーション」と、できるだけ多くの人命を救うための「対策のプライオリティー」を議論し、一定の社会的コンセンサスを得ることが、喫緊の課題だろう。

ゲスト / Guest

  • 岡部信彦 / Nobuhiko OKABE

    日本 / Japan

    国立感染症研究所感染症情報センター長 / Head, Center for Infectious Diseases National Institute of Infectious Diseases

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