2008年08月08日 00:00 〜 00:00
楊逸・芥川賞受賞者

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会見詳録


会見リポート

自称“文筆匠人”

秋岡 家榮 (朝日新聞出身)

本名はリュウ・チアオ。チアオは古語で、辞書に「錦葵」とある。日本の「アオイですか」ときいたら、うなずいた。父親は文人であろう。

中国の北端、黒龍江ハルビンの生まれ、44歳。二児の母。「シングル・マザー」と本人は説明したが、日本語ではバツイチだろう。離婚した。

結婚前は東京発行の華字紙「中文導報」の社長秘書、その前はお茶大で地理学を学ぶ。その前は、横浜のおじを訪ねて来日、日本語学校で日本語にふれた。その前はアメリカへの留学にあこがれた。

日本語で小説を書き始めたのは、一昨年あたりから。またたく間に文学界新人賞、そして今度の芥川賞と続く。

せっかくの受賞なのに、本国からの論評がない。黙殺なのだ。なぜか。題材の「天安門」がたたった。事件のあと、外国へ逃げ出した青年の流転を追う。

時はオリンピック。国威発揚の時期だ。中国のテレビ、新聞からの取材はあったようだが、本社のデスクが通さなかった。

在日中国人の間では「運が悪かったのね」という同情もある。しかし、本人には二児が育ったあと、中国文壇への“登場”という気持ちがないわけではない。いや、むしろ本心は、中国語の作家になりたいとみた。

「私は文筆の匠よ」

という。書いたものは面白くなければならない。「どうぞ私の小説を読んでください」ともいう。芸術家というより、名工を目指す人と呼ぶのがふさわしい。どこか、歌の職人、大川栄作に似ている。

反体制作家ではない。「民主民主というけれど、腹ペコはだめ」「オリンピック妨害反対」、そして「中国は専守防衛」。すこぶる常識的である。

ゲスト / Guest

  • 楊逸 / Yang Yi

    中国 / China

    芥川賞受賞者 / Akutagawa Prize Winner

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