2008年08月21日 00:00 〜 00:00
樋渡利秋・検事総長

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会見リポート

裁判員制度は民主主義の申し子

荒井 六貴 (東京新聞社会部)

国民が裁判に加わる裁判員制度が、来年5月から始まる。選任手続きが本格化するのを前に、社民や共産などの野党からは、制度の延期を求める声が強まってきた。各種の世論調査では相変わらず、国民が参加に消極的な姿勢を示すデータが並ぶ。

逆風の中だが、自身が1999年から2年間にわたり、司法制度改革審議会の事務局長として、制度創設に立ち会っただけに思い入れは強い。「法律実務家がほとんど入っていない審議会で熱心に議論してもらい、国会でほぼ全会一致で採択された『民主主義の申し子』。どう発展していくかが、わが国の民主主義の試金石になる」

最高裁の調査で4割超が「義務なら」参加すると回答している。これを国民の消極的な意見とする見方には「税金も義務だから納めているというのと同じで、義務なら裁判員に出ますよ、というのは立派な積極派だ」と切り返した。

裁判員制度の導入や法曹人口の増加など一連の司法制度改革は、小泉純一郎元首相の構造改革の一環だった。行政指導による事前規制型社会を、規制緩和によって事後チェック型社会に転換するために進められた。「事後」型の象徴的な例として、ライブドア元社長堀江貴文被告らによる証券取引法違反事件を挙げる。「規制緩和がなければ、あれだけの若い人は表に出てこられなかった。実刑は厳しいと見られるが、一般投資家が損をこうむったことを忘れては困る」。自由競争に委ねる一方で、ルール違反者には厳罰を求める。

「大きな司法」の中で、焦点になっている裁判員制度。検察は、裁判員に分かりやすく立証する責任を負う。供述調書偏重から脱却し、公判を重視する刑事司法に変わりつつある。検察もまた、試されている。

ゲスト / Guest

  • 樋渡利秋 / Toshiaki Hiwatari

    日本 / Japan

    検事総長 / Prosecutor General

研究テーマ:第11回記者研修会

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