2008年07月25日 00:00 〜 00:00
本間長世・東京大学名誉教授「アメリカの底流」10

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会見リポート

米国大統領とリーダーシップ

鈴木 美勝 (時事通信解説委員)

1950年代、米国に留学。緑さす山間のダートマス大学、多様性の坩堝マンハッタンのコロンビア大学で米思想史を学んだ本間長世教授。広い知識と深い洞察力に支えられた講義は実に興味深かった。

東西両岸の時差3時間という広大な連邦国家アメリカ。移民の波が次々と押し寄せ、デモクラシー進化の過程で様々な情報伝達手段が発達した。が、強いリーダーシップを発揮する最大のツールは、言葉そのものだ。

国家分裂を救ったリンカーン、20世紀の世界秩序を提唱したウィルソン、大恐慌を乗り越えたF・D・ルーズベルト。本間氏は、戦争と直に向き合い危機の時代を克服した大統領3人のリーダーシップの共通点は、雄弁家という点だと指摘する。

そして冷戦時代。「(熱い)戦争に到らずに済ませる貢献」を果たしたレーガンも「言葉の政治家」であった。本間氏は、「実は」と一息入れ、グレート・コミュニケーター、レーガンの注目されていない側面に光を当てた。ハリウッドの元俳優として「超大国アメリカの大統領役」を演じた政治家、そのイメージが強いせいか、スピーチ・ライターが書いた原稿をプロンプターでそのまま読んでいただけという固定観念を持たれがちだ。が、レーガンのスピーチ能力の本質はそれより深い所にあった。「実に多くの人に手紙を書き、日記を克明に書いていた言葉の人」レーガンは、政治における言葉の力を信じ、自らも言葉を日々洗練し研ぎ澄まし、コミュニケーション能力を鍛え上げていった大統領だった。

翻って、今やテレ・ポリティックスがパワーを増し、インターネット、ブログが政治の小道具として持ち込まれた日本の政治にも、夥しい言葉が氾濫する。空虚、空疎な言葉が飛び交い、大衆の海にばら撒かれる。国民との「対話」を通じて政策を実現する─国民とのコミュニケーション能力が、リーダーに今ほど求められている時代はない。

ゲスト / Guest

  • 本間長世 / Nagayo HONMA

    日本 / Japan

    東京大学名誉教授 / Professor emeritus, University of Tokyo

研究テーマ:アメリカの底流

研究会回数:10

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