2008年07月03日 00:00 〜 00:00
サミール・アブドッラー パレスチナ自治政府計画庁長官

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会見リポート

経済発展が不可欠なビジョン

原田 健男 (元JNN中東特派員・山陽放送出身)

「経済発展こそが必要不可欠なビジョンだ」。この日こう語ったのは、中国やインドなどの新興国や発展途上国の指導者ではない。長くイスラエルと対立し、戦い、交渉してきたパレスチナ自治政府計画庁長官サミール・アブダッラー氏の発言である。

アブダッラー長官は日本政府がイニシアチブをとり、進めている「平和と繁栄の回廊」協議のため来日した。これは、イスラエルが占領しているパレスチナのヨルダン川西岸地区に農業団地を作り農産品貿易の手助けをと日本が小泉政権の時に打ち出し、パレスチナ・ヨルダン・イスラエルとの4者間で準備が始まっているプロジェクトである。

1948年のイスラエル建国以来60年、いまだテロと報復の連鎖が続くパレスチナ。先の見えない争いに終止符を打つにはまず、パレスチナの若者に仕事を与え、将来に希望を持たせることが大事であるとの認識に立ったものだ。

アブダッラー長官は経済発展とともに「(占領地の)ガザとヨルダン川西岸に主権を持ち、あらゆる国民に平等を保障する民主主義国家」を樹立したいと語った。しかしパレスチナには依然多くの困難な問題が立ちふさがっている。イスラエルに占領されているヨルダン川西岸とガザは自治政府と、過激なハマスの二つの別々なパレスチナ人組織に分かれている。ガザの経済状況は西岸より悪く、150万人のうち100万人が難民でキャンプなどに住み、失業率は40%に及ぶ。日本政府はこれまでパレスチナ人の生活環境改善などに相当な資金を拠出しているが残念ながらそれに見合った学校やインフラが整備されているとは思えない。今度こそ「ヨルダン渓谷農業団地」という地に付いたプロジェクトでパレスチナが経済発展で平和に向かえるよう、実のある手助けをしてほしいと願わずにはいられない。

ゲスト / Guest

  • サミール・アブダッラー

    パレスチナ自治政府 / Palestinian Interim Self-Government Authority

    計画庁長官 / Planning Services Agency

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