2008年07月02日 00:00 〜 00:00
サラーハッディーン・バシール・ヨルダン外相

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会見リポート

のしかかる59万のイラク難民

石合 力 (朝日新聞政治グループ兼外交国際グループ次長)

かつて中東和平が危機に瀕するたびにヨルダンは独自の存在感を示してきた。10年前、米ホワイトハウスで、病魔に冒され死期が迫るフセイン国王を間近に見たことがある。パレスチナ、イスラエル、米国の首脳を前に「我々の子どもたちとその子孫の未来のためにも、無責任な行動や狭量な考えを求める権利はない」と切々と訴えた姿を思い出す。

「止め役」を失った中東では、その後、過激化と暴力の応酬という悪循環が続いている。イスラエルとイラクにはさまれたこの国ならではの外交力を発揮できる場面は、いまではほとんどなくなった。バシール外相によると、イラク戦争開始から5年後のいまも、約59万人のイラク難民が国内に滞在する。パレスチナ出身者を含むこの国の総人口の約1割にも上る新難民への行政サービスが大きな負担となってのしかかる。

今回の来日は、日本が主導するパレスチナ支援策「平和と繁栄の回廊」の閣僚級会合への出席が目的。ヨルダン川西岸の経済開発を進め、米国の仲介による和平の進展を側面支援する狙いだが、和平交渉自体は停滞したまま。パレスチナ国家の樹立に向けて本格的な和平交渉を開始し、今年末までの妥結達成を目指すという米国のシナリオの実現可能性は限りなくゼロに近い。それでもそのシナリオから「目をそらさず、関与していくことが重要」というしかない外相の発言に、事態の絶望的な状況が表れている。

ハーバード出身の法律家で産業貿易相から転じた実務家だけに、原油高などに対する説明は立て板に水。死海の水位が下がるなか、環境問題への関心も高く「水資源では世界で下から4番目に貧しい」と訴えた。

ゲスト / Guest

  • サラーハッディーン・バシール / Salah Al Deen Al Basheer

    ヨルダン / Jordan

    外相 / Minister of Foreign Affairs

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