2008年07月01日 00:00 〜 00:00
佐々木毅・消費者行政推進会議座長

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会見リポート

産業育成から消費者重視へ

日本経済新聞論説委員兼編集委員 (岩田 三代)

「消費者庁」とはなんぞや。昨年暮れに構想が浮上したころ、世間では「首相の人気取りパフォーマンス」と冷ややかな見方も目立った。ところが相次ぐ消費者被害への危機感と福田首相の熱意があいまって、6月27日には来春の創設へ向けた基本計画を閣議決定。秋の臨時国会に設置法案の提出が予定されるなど、いよいよ現実問題になってきた。新組織の基本設計を担当した消費者行政推進会議の座長の会見に詰めかけた会員の顔からは、どんな組織になるのか、その狙いは──といった関心の高さが見て取れた。

「自民党の総裁がこういうことを言う時代になったんだなあと思いましたよ」。会見ではこんな発言もあったが、強調したのは「消費者庁は行政が産業育成優先から消費者重視に変わる象徴」ということだ。明治以来、政府は殖産興業を掲げ業法をもとに行政のかじ取りをしてきた。消費者保護は二の次で、被害者発生にも対応は鈍かった。

「議論の過程で消費者行政が、中央は縦割り、地方は衰弱の二重の問題を抱えていることが浮かび上がった」とも指摘。これを是正し、業法に紛れ込み林立している消費者問題を一つにまとめてしまおうというのが消費者庁構想だと力説した。ただ、推進会議の報告は骨格を定めただけ。30の法律の移管は決まったが二重行政や新たなすき間が生じる恐れはないか、民主党は賛成するか、組織の規模はなどの質問には「人の配置など、それなりの体制にしてもらわなければ」と話したものの明快な答えはなかった。

テーマとは離れたが、最後に政治学者として「今の政治の政策論議はピンぼけ。政治家も役人も東京で育った二世、三世が主導しているせいではないか」との辛口コメントも飛び出し会場を沸かせた。ともあれ、消費者庁の今後が注目される。

ゲスト / Guest

  • 佐々木毅 / Takeshi SASAKI

    日本 / Japan

    消費者行政推進会議座長 / Chairman, Consumer Policy Committee

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