2008年06月20日 00:00 〜 00:00
木村汎・北海道大学名誉教授「ロシア」14

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会見リポート

不自然なロシア式ねじれ現象

山内 聡彦 (NHK解説主幹)

「メドベージェフはお釈迦様の手のひらの上で踊る人形だ」

ロシア新政権の発足から1カ月余り。メドベージェフ・プーチンの二頭体制をどう見るか大きな関心を集めているが、ロシア研究の権威の木村教授はメドベージェフは中継ぎピッチャーにすぎないと指摘する。

ではプーチンはなぜメドベージェフを後継者に選んだのか。それは彼が一番御しやすく、自分の路線を忠実に進めてくれるからだ。これまでの体制を続けるために、その代わりになるものが二頭体制で、プーチンは名を捨て実を取ったと見る。

憲法上はメドベージェフが上だが、実権はプーチンが上という「ロシア式ねじれ現象」は不自然で、いつまでも続かないだろう。プーチンは自分の路線が継続される限り、メドベージェフをたてるが、逸脱すれば彼を切り捨て自分が取って替わる。二頭体制は事実上の第3期プーチン政権だと指摘する。

それにしてもプーチンは人事の天才だと木村教授は驚嘆する。メドベージェフは新機軸を打ち出そうとしても部下も手立てもない。黒子だったシロビキも表に出て神通力を失うだろう。メドベージェフが進める汚職対策も「成功しない」と断言する。体制が絡んだ汚職はいくら見せしめをやってもうまくいかないからだ。

では日ロ関係はどうか。短期的には日本にはチャンスも希望もなく、外交的にこちらから動いてもしようがない。ただメドベージェフが独り立ちすれば中長期的にはチャンスがあるかもしれないという見方だ。

ロシアに辛口で知られる木村教授。「今の路線を続けてもロシアは決して真の意味での強い国にはならない」と苦言を呈する一方、「リベラルで民主的になってほしい。自分が研究してきた国が単なる独裁の国であったとしたらあまりにも寂しい」と複雑な心境もうかがわせた。

ゲスト / Guest

  • 木村汎 / Hiroshi KIMURA

    日本 / Japan

    北海道大学名誉教授 / Professor emeritus, Hokkaido University

研究テーマ:ロシア

研究会回数:14

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