2008年06月09日 00:00 〜 00:00
マッティ・ヴァンハネン・フィンランド首相

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会見リポート

環境先進国の知恵

佐々木正明 (産経新聞外信部)

日本の9割ほどの面積に、北海道と同じぐらいの人口が住む北欧の国フィンランド。環境問題に関する国民の意識が高いのは、近年の気温上昇により、美しい森や湖が急激に変貌していくさまを、常に目の当たりにしているからなのかもしれない。

同国は、温室効果ガス抑制を主要政策に掲げている環境先進国だ。バイオマス燃料を積極的に活用し、全消費エネルギーのうち、すでに再生可能エネルギーが占める割合は25%に達する。二酸化炭素排出の少ないエコカーへの自動車登録税を安くする課税制度を実施するなど、他国に先駆けた政策も目立つ。

首相は、今回の訪日を「日本の政策決定者に、エネルギーと環境分野に関するフィンランドの対処策を伝えるため」と位置づけ、会見のスピーチでは、「先進国は温暖化に責任を持って取り組まなくてはいけないが、日本は、新興国や発展途上国への資金援助や省エネ技術移転の分野で、よりいっそうの力を発揮する立場に置かれている」と力説した。

興味深いのは、スピーチの約半分をロシアについて語ったことだった。「天然ガスの全消費量の4分の1、石油の3分の1をロシア産に依存している欧州にとって、ロシアの存在を抜きにしては環境問題の議論はできない」という。

首相は、「資源の輸入に頼るうえで、今後もロシアとの機能的な関係を結ぶことは死活的に重要。欧州がロシアのエネルギー産業の効率性を高める投資を行っていくことが、環境問題の解決策としても最善の方法なのだ」と指摘した。環境の世紀に、ロシアといかに付き合っていくか。資源大国の隣国という点で、同じ境遇のフィンランドが絞り出した知恵は、示唆に富む。「気候変動との戦いには情熱と行動力が大事」との言葉には、森と湖の国の住人の危機意識がにじみ出ていた。

ゲスト / Guest

  • マッティ・ヴァンハネン / Matti Taneli Vanhanen

    フィンランド / Finland

    首相 / Prime Minister

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