2008年06月04日 00:00 〜 00:00
グレアム・フライ・駐日イギリス大使

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会見リポート

ジャパノロジストの苦言

上西川原 淳 (共同通信・元ロンドン特派員)

在任中の4年間を振り返った会見は、最近の日本の外資規制の動きなどを「嵐が来そうなので港にとどまろうと決めた」と例え、用心深すぎると日本は経済大国の座から脱落する恐れがあると警鐘を鳴らした。英国で日本に精通する人を意味する「ジャパノロジスト」の代表で、約1時間の会見をすべて日本語で行った。

大使はまず、英国と日本には似た部分も多いが、グローバル化への対応で「開放性」を前面に出す英国と、慎重な日本は異なった戦略を取ってきたと指摘した。

日本も高齢化社会の到来で、退職者らの貯蓄から多くの利益を確保する必要があるが、それは、高配当など株主の権利を重視する英国のような「投資の国」となることを意味すると強調。しかし最近の日本は「反対方向」に向かっている印象があると懸念を示した。また日本が国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指していることを念頭に、日本が憲法上の制約を踏まえ国連平和維持活動(PKO)に、より積極的に参加するよう要請、現状への「失望」も表明した。

英国の移民増加の問題を認めた上で、移民が英国の「経済、政治、文化」の分野で多大な貢献をしていると強調し、多様な英国はグローバル社会の縮図だとの考えを示した。

インド系の英上院議員が、「自分は、100%インド人で100%英国人」だと話したとのエピソードも紹介。「国」に対する日本人と英国人の考え方の違いをあらためて感じた。国民性の違いもあるがグローバル化時代に「国際活動の中心とならなければならないと結論づけた」「とにかく出港して、嵐が来たら、海で乗り切る」(大使)という英国の今後の針路には、グローバル化の急速な進行に戸惑っているかにも見える日本が、参考にできる点もあるのではなかろうか。

ゲスト / Guest

  • グレアム・フライ / Graham Fry

    イギリス / UK

    駐日大使 / Ambassador to Japan

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