2008年06月06日 00:00 〜 00:00
田中伸男・IEA事務局長

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会見リポート

グローバルなエネルギー革命を

豊田 千秋 (読売新聞経済部)

原子力発電所を毎年32基建設し、10億台の電気自動車や燃料電池車を走らせ、世界の費用負担は総額45兆ドルに達する──。

IEAの試算で、2050年までに世界の温室効果ガスを半減するために必要となる数字だ。IEAの田中氏は、G8エネルギー大臣会合を前にこの試算を公表し、「新しいグローバルなエネルギー革命が必要だ」と実現の難しさを強調した。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると、危険回避のためには世界全体で2050年に00年比で50~85%削減が必要とされ、IEA試算もこれに沿ったものだ。田中氏は半減達成のカギを握るのは「CCS(二酸化炭素の地下貯蔵)と省エネだ」という。

省エネ世界一の日本は、技術協力などで半減への道筋を先導することが期待される。福田首相は北海道洞爺湖サミットを前に、「日本は60~80%削減を目指す」と明言した。ただ、数字だけ示しても、根拠がないと漠然とした不安が広がるだけだ。IEA試算のような、ある程度具体性を持った議論が必要だろう。

地球温暖化の危機に加え、足元では世界各地で原油高騰への不満が高まり、デモや暴動が相次ぐ。

田中氏は「地下より地上の問題」と説く。つまり、埋蔵量は十分あっても、外資の資源採掘を認めなかったり、国営石油会社があってもカネを他の目的に使う政府があるという。田中氏は「産油国、消費国の大臣が集まる会議があり、IEAは『原油価格が高すぎると思わないか』と尋ねたが、消費国からも反応がなかった」という興味深いエピソードを紹介した。原油先物相場に投機マネーが流れ込んで価格がつりあがり、それで潤う部分も無視できない──。そんな消費側の思惑に想像を膨らませ、不愉快な気分になってしまった。

ゲスト / Guest

  • 田中伸男 / Nobuo TANAKA

    日本 / Japan

    国際エネルギー機関(IEA)事務局長 / Secretary General, IEA

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