2008年06月03日 00:00 〜 00:00
江利川毅・厚生労働事務次官

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会見リポート

制度廃止論を否定

稲葉 康生 (毎日新聞論説委員)

野党が参院に提出した後期高齢者医療制度廃止法案の委員会審議が始まった日の会見とあって、やや緊張した表情で用意した資料に目をやりながら、淡々とした説明が続いた。

まず、日本の医療政策の歩みを紹介。高齢化の進展などによって90年代後半から医療費が3~4%伸びたことで、自己負担の引き上げや給付範囲の見直しを行ってきたが、そうした対応が限界に達し、今回の医療制度改革に至ったと、これまでの経緯について述べた。

4月から始まった後期高齢者医療制度に対しては高齢者らから「年寄りは死ねと言うのか」と厳しい批判が噴出しているが、この点については「制度の趣旨について、もっともっと十分な説明をすべきだったと反省している」と、説明不足を率直に認めた。しかし、続けて「制度の根幹は維持すべきだ」と述べ、野党から出ている制度廃止論を退けた。

多くの国民が知りたいのは「なぜ75歳で線引きしたのか」という点だが「後期高齢者という言葉は、平成14年ごろからの議論の中で特別の意味を持たせるつもりもなく使ってきたが、一般に膾炙していなかった。名前には問題があった」と釈明。続けて「75歳以上で入院の比率が高くなってくる」などと語った。

新制度が定着するのか、それとも廃止論がさらに強まるのか。今が、その正念場だ。「75歳以上を切り捨てるのか」という切実な声に対して、明確に「うば捨て山にはしない」という強いメッセージを出せるかどうかがカギを握っている。高齢者の納得が得られなければ、新制度への不信は解消できない。

課題が山積し、社会保障は大きく揺らいでいる。内閣府事務次官を経て古巣・厚労省に戻り、陣頭指揮をとる江利川次官が、難局をどう切り開いていくのかを注目したい。

ゲスト / Guest

  • 江利川毅 / Takeshi ERIKAWA

    日本 / Japan

    厚生労働事務次官 / Permanent secretary, Ministry of Health

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