2008年05月26日 00:00 〜 00:00
和田春樹・東京大学名誉教授「ロシア」13

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会見リポート

プーチンの奇妙な推薦

佐々木 正明 (産経新聞外信部)

プーチン氏から大統領職を引き継いだメドベージェフ氏は今後、反抗期を迎えるのか、それとも親離れまでいってしまうのか。ロシア特有の政治現象を語りながら、このテーマが終始、ちりばめられた研究会となった。

後継指名した際のプーチン演説を引き合いに出し、「自分の意を汲んで働いてくれる一番誠実な部下としてメドベージェフを選んだ」と説明。演説の中の「(メドベージェフ氏に)ロシアの運命を委ねることは、恥ずかしいことでも恐ろしいことでもない」という表現に着目し、「奇妙な推薦の辞であり、プーチン氏のメドベージェフ氏に対する扱いは相当に低いことを感じる」との深い洞察も見せた。

実権はプーチン氏が握るとの判断に、参加者から「男の子(メドベージェフ氏のこと)が階段でじっと立ち止まっていられるだろうか」と質問されると、「どこかでキレる場合があるかもしれないが、そのときはプーチンが凄みをきかせ、奥の手を使い、名目的にも実質的にも権力を奪取する」と予想した。双頭体制が崩れるのは、2人とは直接のかかわりのない抗争によって2人の間に対立が生まれ、しかもメドベージェフ氏をかつぐ勢力が出てきたときなのだという。

「矛盾が共存する国」には、強力な権力を希求するグループと、自由と解放を志向するグループがあり、「この2つの原理と対立がロシア史をずっと貫いている」との〝和田史観〟も語られた。これまで類を見ない双頭体制に課せられた命題は、この矛盾、対立をいかに理性的に克服していくかにあるとし、研究会を「それがロシアにおける進歩。同じことは繰り返さない」と言って締めくくったところに、半世紀近くもソ連・ロシアを研究対象としてきた歴史学者の同国への愛情を感じた。

ゲスト / Guest

  • 和田春樹 / Haruki WADA

    日本 / Japan

    東京大学名誉教授 / Professor emeritus, University of Tokyo

研究テーマ:ロシア

研究会回数:13

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