2008年05月12日 00:00 〜 00:00
白川方明・日本銀行総裁

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会見詳録


会見リポート

対話の場として会見を重視

小此木 潔 (朝日新聞編集委員)

ゲストブックに「誠実とプロフェッショナリズム」と書いたあと、それを地でいく好感度抜群の会見。船橋委員長が発した「白川ゼミ」の形容が会場の雰囲気を象徴していた。はじめは緊張気味の白川氏だったが、質問を受ける段階では「ゼミ風で恐縮ですが」などと笑わせながら、丁寧に説明する姿が印象的だった。

冒頭、会見に臨む理由を「皆様の厳しい質問にお答えする形で私自身の考えを吟味し、日銀の考えをご理解いただく上で貴重な機会と考えたからです」と述べ、積極的な対話姿勢を打ち出した。時機を見計らうことばかり優先しがちに見えた従来の日銀総裁とは明らかに違う。この積極性は、情勢や分析に関する踏み込んだ説明にもうかがえた。

世界的な金融危機の震源となった米国経済については「今のところ住宅価格が下げ止まらず、金融市場の混乱も収まっていない。帰趨が見えないところに最大の不確実性がある」と、実体経済の現状を重視する慎重な見方を披露。当面の金融政策運営に関しては「今は景気の下ぶれリスクに最も注意が必要」とする一方、金利だけでなく資産価格などを含めて「広く経済を見る」ことが必要で、「多くの不確実性が存在することを忘れてはならない」と、柔軟な構えを示した。

さらに金融と経済の間には複雑な依存関係があり、「人間の知識には限界がある」と認識したうえで「謙虚な気持ちで臨むことが必要」と、分析の絶えざる更新を強調した。

対話の場として会見を重視する今の姿勢を続けていけば、日本が人格・識見とも素晴らしい人物を中央銀行総裁に選んだことを、やがて世界が認めるだろう、と思った。

ゲスト / Guest

  • 白川方明 / Masaaki Shirakawa

    日本 / Japan

    日本銀行総裁 / Governor,the Bank of Japan

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