2008年05月09日 00:00 〜 00:00
ノパドン・パッタマ・タイ外相

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会見リポート

地域開発と隣国への配慮

猿渡 純一 (共同通信編集委員兼論説委員)

2月のサマック政権の発足後、タイの主要閣僚の来日はスラポン副首相兼財務相に続き2人目。日本の外務省主催の青年の船に乗って来日、帰国後は参加者のタイでの同窓会の中心的役割を果たしているという知日派だ。新政権下で日タイ関係の安定が確認されたこともあり、スピーチは近隣諸国を含めた地域開発に、質疑もミャンマーのサイクロン被害の実情と人的援助受け入れを拒むミャンマー政府への対応に集中した。

「東南アジアのデトロイト」を自認するほどに、自動車組立産業を中心に順調な工業化が進んでいる自信からだろう。まず「タイと近隣諸国の発展はパッケージで」とした上で、タイの外交政策の優先順位の筆頭にASEAN統合問題をあげた。2015年の共同体創設目標が掲げられているものの、加盟国間の所得格差など課題も多いと指摘し、「日本はASEANを含めた東アジア共同体の中で最大の貢献ができる」と日本の支援への期待を表明した。また、GMS(メコン川流域開発計画)などで中国南部を含めた広範な協力を進めることの重要性も強調した。

ミャンマー情勢では現在20万人の難民を受け入れ、200万人近い不法移民がタイ領内にいること、来日中にミャンマーの外相と電話会談し、国際的な人道支援受け入れを要請したことを明らかにした。ただ、「ミャンマーの民主化は欧米も含め各国が望むところだが、制裁は望む結果をもたらさない」と隣国への配慮も見せた。

食料価格高騰の中で、最大のコメ輸出国として石油並みにOREC(コメ輸出国機構)を創設する構想については「国際社会の責任ある一員としてカルテルはつくらない」と否定した。その一方で、コメの生産、技術面などで国際協力を進めていく機関の必要性も強調した。

ゲスト / Guest

  • ノパドン・パッタマ / Noppadon Pattama

    タイ / Thailand

    外相 / Minister of Foreign Affairs

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